武藤先輩は右の眉をピクリと跳ねさせる。
「用事があるなら別に明日でなくとも構わないが」
「もう、弾けないと思いますよ」
俺の一言に先輩はさらに眉を吊り上げ、それはやがて困惑顔になった。
「たぶん、今日のような音はもう出せませんので。失礼します」
そうして俺は立ち上がり、鞄を手にして帰る準備を整える。
その間先輩は一言も言葉を発しなかった。
ドアの前まで来て、一度振り返り軽く会釈とお礼を述べてからドアノブに手をかける。と、まさにその時だった。
「まるで理屈に合わないね
振り返ると武藤先輩は顔にそれはそれは美しい微笑を称えていた。
「弾けないなんてまるで意味がわからないな、僕は決めた。君は今日からピアノ部員だ。僕が入部を許可する」
はっ・・・?
