5分もしないうちに俺は椅子で作られた即興の簡易ベットに、ご丁寧にたまたまあったと言うタオルケットまで被って寝かされていた。
「見たところ貧血だろう。こういう時は横になるのが一番さ、よくなるまで休んでいってくれ」
そう言葉を残して、先輩は俺を置いてどこかへ行ってしまった。
俺は一息ついて、意識的にピアノの方へ視線を向ける。
今はもう、心の激しい動きは感じられなかった。
一つため息をつく。
全く、ピアノ何て毎日眺めているし・・・それに演奏だって別にたまたま耳にしたからといって普段ここまで取り乱れるような事はないはずなのに・・・
何だっていうんだ今日は?
でも、本当に何て言うのだろうか?こう・・・さっき廊下で聞いた音は何かを彷彿とさせる気がしてヒリヒリとした痛みを感じたんだ。
実のところは自分でもよく分からなかった。
それにしても何なんだろな?あの先輩・・・って!
俺は唐突にある事に気がついて起き上がった。
血の気が一気に引く。
もしかして、さっきのピアノを弾いていたのはあの先輩なんじゃないだろうか?
いやたぶんじゃない、廊下で会ったタイミングからして絶対にそうだろう。
どうしてすぐに気がつかなかった?
突然合致した事実に、急にこの場から逃げ出したい気持ちでわたわたとしていると、折り悪くその渦中の人物が戻ってきた。
「おい君、だめじゃないか。きちんと寝ていなきゃ」
「いや、あの、もう平気なので・・・」
「何を言っている?」
ぎろりと凄みのある顔で睨まれ、俺はたじろぐ。
「保健の先生に今伝えに行ったのだが・・・生憎留守のようだった。だからここでしばらく休め、いいな?」
そう凄まれ、俺は大人しく言うことを聞くしかない雰囲気へと流されてしまった。
改めて窺うと、やはり日本人離れをした顔つきだ。
髪もうっすらと茶色みがかった栗色で、男子としては長めの髪は自然に動きがある。後ろへ撫でつけるように流れていて、それがまた映画で観た英国貴族のを思わせ浮世離れしていた。
肌もおよそ日本人には見られない抜けるような白さだ。
