はじめまして、私の知らない婚約者様

「聞かなくても状況が物語っている。おおかた、ブルーノ王子様の腕を、豊満な胸に埋めている令嬢と恋仲で。婚約者である私が邪魔になったのだろう。それで? 私がやってもいない罪を上げにでも来たのか? 先ほどまで、婚約者の存在自体知らなかった私に対して、胸の大きなその令嬢に嫌がらせをしたと。本気で信じているのだとしたら滑稽だな」
「なっ! いくらなんでも不敬だぞ!」
「そうだろう、そうだろう」

 わざと言ったのだから。いくら頭の軽いブルーノでも分かってくれて嬉しいよ。

 けれどまだ頭が追いついていないのか、傍らの令嬢も困惑している。だからトドメを刺すことにした。

「私は婚約破棄を受け入れるし、このまま学園を去る。だが、面倒な手続きはそっちで勝手にやってくれ。尚、カーマイン公爵は、この件を素直に受け入れるだろう」

 私がそのようにしたのだから。

 困惑するブルーノを含め、食堂にいた者たちを置き去りにし、私は学園の門へと向かっていった。午後も授業はあるが、「去る」と言った以上、ここにいる意味はない。時間の無駄だ。

 私がミルドレッド・カーマイン公爵令嬢でいる意味がなくなったのだから。