恋が生まれた日

救急車のサイレンが近づいてくる

紬たちは救急搬入口の前で患者の到着を待っていた

すぐに救急車が到着し、後ろのドアが開きストレッチャーが降ろされる

運ばれてきた女性は顔面蒼白で、額には脂汗が滲んでいた

シーツは腹部を中心に真っ赤に染まっている

紬の胸がざわついた

出血量が明らかに多い

「24歳女性、妊娠20週、交通事故による外傷」

救急隊員がストレッチャーを押しながら報告する

「血圧74/42、脈拍120、JCS200、胎児心拍は確認できていません」

その言葉に空気が一瞬凍りつく

危険な状態だ

「時間がない、運ぶぞ!」

橋本先生の低い声が響く

ガラガラとストレッチャーを鳴らしながら処置室へと急ぐ



ウィーンと処置室のドアが開く

すでに準備は整っており、部屋全体に緊張感が走っている

すぐに患者を処置用のベッドへ移動する


「モニターつけて!ルート2本」


橋本先生の指示が飛ぶ

その緊張感に負けないように紬はモニターをつけて、ルートをとる

ピッ、ピッ、と心電図の音が鳴り始めた

繋がれた先のモニターには依然、危険な状態の数値が示されている

紬は目の前の患者に向き合う

青白くなった顔、唇は紫色に変わり始めている

迷っている余裕はない

紬は看護師に指示を出す


「輸血お願いします

クロスマッチも」


はい!、と看護師は返事をする

その横で橘先生は腹部にエコーを当てていた

モニターには胎児がぼんやり映る


「......早期剥離だな、心拍も確認できない」


その一言で処置室の空気がさらに張り詰める


その言葉を聞いた橋本先生は


「輸液全開にして!バイタルは?」

「60台まで下がってます!」


母体も胎児も危険な状態だ

そのとき


ピーーーー


と音が鳴る

今まで波線を示していたが急に直線になったのだ

これは心拍がなくなったことを意味する

紬はおもむろに心臓マッサージを始める


助かって――


その思いだけでひたすら続けた



紬の額に汗が滲むくらい続けていたとき

誰かがその手を止める