紬は山のように積まれた唐揚げのトレーを持ち、橋本先生がいる席へ向かった
トレーを置いた瞬間、橋本先生が目を丸くする
「お前、どんだけ食うんだよ」
呆れたように笑ったあと、紬の後ろに視線を向けた。
「お、結紀も来てたんだ」
紬は驚いて振り返る
橘先生がトレーを持ったまま立っていた
「え? お2人、知り合いなんですか?」
思わず聞くと、橋本先生がさらっと答える
「うん、同級生」
そう言いながら隣の席を指した
橘先生も何事もないようにその席に腰を下ろす
「そういえば......」
橋本先生が橘先生に何かを聞いている
紬も医者なので専門的な立場からの助言を求めているのは分かる
だが、難しくて紬には理解ができなかった
「...なぁ、......朝比奈」
目の前の唐揚げとの戦いに夢中になっていたとき橋本先生に声をかけられた
「ふぉい?」
口いっぱいに頬張りながら返事をする
「お前、専攻科どこにするか決めたの?」
専攻科か――
「なんとなくは決めてます」
唐揚げを飲み込んでからそう答える
橋本先生はニヤッと笑う
「結紀のとこ、行くんでしょ?」
「えっ?」
「せっかく手間暇かけて育てたのに取られちゃうのか〜」
わざとらしく肩をすくめる
「さみしいなぁ」
その言葉に橘先生の眉がピクッと動く
「......そうなのか?」
低い声で紬に問う
紬は一瞬言葉に詰まった
産婦人科に行きたい気持ちはある
けれど、あの日橘先生に言われた言葉が頭をよぎる
――その子の人生を背負う覚悟があるのならな――
自分にそこまでの覚悟があるのか
まだ答えは出ていなかった
だからこう言うしかなかった
「まだ、はっきりとは……」
「そうか」
そう答える橘先生は少し寂しそうな顔をしていた
そんな空気を変えるように橋本先生が笑う
「まぁ、まだ時間はあるでしょ?
ゆっくり決めたら良いよ」
そう言いながら味噌汁をすする
その時だった
ピリリ、ピリリ
と橋本先生のPHSが鳴る
紬は呑気に唐揚げを頬張っている
みるみるうちに橋本先生の顔が険しくなり立ち上がる
「分かった、すぐ行く」
PHSを切りまだ食べ切ってないチキン南蛮定食のトレーを持ち上げた
「事故にあった妊婦が運ばれてくる
準備しろ」
そして橘先生に視線を向ける
「ちょうどいい、結紀も来い」
橘先生も無言で立ち上がりトレーを返却口へ運ぶ
状況を理解した紬も慌てて後を追う
静かな食堂に3人の足音だけが響く
返却口には半分以上残った唐揚げがぽつんと置かれていた
トレーを置いた瞬間、橋本先生が目を丸くする
「お前、どんだけ食うんだよ」
呆れたように笑ったあと、紬の後ろに視線を向けた。
「お、結紀も来てたんだ」
紬は驚いて振り返る
橘先生がトレーを持ったまま立っていた
「え? お2人、知り合いなんですか?」
思わず聞くと、橋本先生がさらっと答える
「うん、同級生」
そう言いながら隣の席を指した
橘先生も何事もないようにその席に腰を下ろす
「そういえば......」
橋本先生が橘先生に何かを聞いている
紬も医者なので専門的な立場からの助言を求めているのは分かる
だが、難しくて紬には理解ができなかった
「...なぁ、......朝比奈」
目の前の唐揚げとの戦いに夢中になっていたとき橋本先生に声をかけられた
「ふぉい?」
口いっぱいに頬張りながら返事をする
「お前、専攻科どこにするか決めたの?」
専攻科か――
「なんとなくは決めてます」
唐揚げを飲み込んでからそう答える
橋本先生はニヤッと笑う
「結紀のとこ、行くんでしょ?」
「えっ?」
「せっかく手間暇かけて育てたのに取られちゃうのか〜」
わざとらしく肩をすくめる
「さみしいなぁ」
その言葉に橘先生の眉がピクッと動く
「......そうなのか?」
低い声で紬に問う
紬は一瞬言葉に詰まった
産婦人科に行きたい気持ちはある
けれど、あの日橘先生に言われた言葉が頭をよぎる
――その子の人生を背負う覚悟があるのならな――
自分にそこまでの覚悟があるのか
まだ答えは出ていなかった
だからこう言うしかなかった
「まだ、はっきりとは……」
「そうか」
そう答える橘先生は少し寂しそうな顔をしていた
そんな空気を変えるように橋本先生が笑う
「まぁ、まだ時間はあるでしょ?
ゆっくり決めたら良いよ」
そう言いながら味噌汁をすする
その時だった
ピリリ、ピリリ
と橋本先生のPHSが鳴る
紬は呑気に唐揚げを頬張っている
みるみるうちに橋本先生の顔が険しくなり立ち上がる
「分かった、すぐ行く」
PHSを切りまだ食べ切ってないチキン南蛮定食のトレーを持ち上げた
「事故にあった妊婦が運ばれてくる
準備しろ」
そして橘先生に視線を向ける
「ちょうどいい、結紀も来い」
橘先生も無言で立ち上がりトレーを返却口へ運ぶ
状況を理解した紬も慌てて後を追う
静かな食堂に3人の足音だけが響く
返却口には半分以上残った唐揚げがぽつんと置かれていた
