恋が生まれた日

次の出勤日、医局にて紬は橘先生にあの日のことを伝える


「まぁ、そんなとこだろうとは思ったよ」


紬が一生懸命悩んでいたのにも関わらず

橘先生はすでに分かっていたかのような返事


「なんで教えてくれないんですか?」


「教えたらお前のためにならないだろ?

長年、産婦人科(ここ)にいたら分かるようになる」


紬はそんなものなのか、と納得する


「お前のその患者を知ろうとする姿勢は

大事だが、この間も言ったように

医者として接することを忘れるな」


橘先生の考えに紬は納得できないでいた


「先生はそうおっしゃいますけど

葵ちゃんは産みたいと思ってますよ」


紬の今の素直な気持ちを伝えた


「じゃあ、お前はどうなったら満足なんだ?

産んだら満足なんか?

考えてみろ

1人で育てるだけでも大変なのに

施設育ちだろ?

本人の将来もままならないのに、子供まで気が回るか?

お前のその考えは無責任すぎる」


紬は言葉を失った

確かに橘先生の言う通りかも知れない

でも――


「後悔、して欲しくないんです

本当は産みたかったのに

諦めないといけなかったって......

女性なら皆、そう思うはずです」


医局に少しの沈黙が流れる

橘先生は小さくため息をついて


「じゃあお前が満足するまでやってみろ」


その言葉に紬の表情は明るくなる

もう一度、葵と向き合おう

そう、決めたとき――


「お前にその子の人生を背負うことができるのならな」