恋が生まれた日

今日は外来から始まる

紬はデスクに座り電子カルテを開いた

その後ろで1年目の木下先生と指導医の橘先生が立っている

診察は基本的に紬が行い、2人は後ろから見守る形だ


看護師に呼ばれ1人目の患者さんが入ってくる


紬は座り直し背筋を伸ばした


「初めまして朝比奈です

本日2名の医師も同席してよろしいでしょうか?」


患者は驚いた顔をしていたがすぐに頷いた


「......はい、大丈夫です」


婦人科はただでさえ足が向きにくい科だ
そこに複数の医師、しかも男性医師がいるとなれば、なおさら抵抗を感じる人もいる

その気持ちは紬にもよく分かる
だからこそ、最初に必ず確認するようにしていた

カルテを見ながら患者に症状を聞く


患者は23歳

3ヶ月前から生理が来ていないようだ


「最後の生理は3ヶ月前ということですね」

「......はい」

「妊娠の可能性は?」

「たぶん......ないと思います」

「そうなんですね」


患者の発言から妊娠の可能性無しとカルテに入力していたとき、


「念の為、検査で確認しましょうか」


と後ろから橘先生の声が聞こえた

看護師に指示を出し患者はどこかへ連れて行かれた


医師だけになった診察室で橘先生は言う


「患者の主訴だけで判断するな

まずは妊娠を確実に除外するところからだ

基本中の基本だろ」


ピシャリと言われてしまった

その発言を木下先生は1年目らしくメモしている


やってしまった......


紬は分かりやすく落ち込んで少し小さくなった

キーボードに視線を落としたまま小さく息を吐く


「外来は続く

同じ間違いをするな

あと、落ち込むのは後にしろ」


紬は小さく返事をする


「......はい」