シルヴィンはボタンを止め終わり、糸切り鋏を入れたところで、顔を上げました。
「二つの宝……? それは一体……」
「金の針と竜の髭(ひげ)。それさえあれば、たとえ記憶が霧に溶けても、愛した人の姿だけは永遠にこの世界に留まるだろう。……だが、それはこの街にはない。はるか彼方、青い天の川の岸辺、あるいは凍った雲の向こう側にあるという、イーハトーブの森に隠されていると言われているよ」
シルヴィンは椅子から立ち上がります。
「……そこへ行けば、私は彼女を忘却の淵から救えるのでしょうか。それとも、私が彼女を忘れてしまう前に、その森に辿り着けるのでしょうか」
南十字星は上着に袖を通すと、遠く、夜の底から「ポーッ」と、孤独で、けれどどこか懐かしい汽笛の音が響いてきました。
紳士は、星屑をまぶしたような銀の懐中時計を取り出し、カチリと蓋を開けます。
「おや……。そろそろ汽車の時間だ。私はあの列車に乗って、終点の街へ帰らなきゃいけないんだ」
紳士は帽子を軽く直し、まだ魔法にかけられたように立ち尽くすシルヴァンへ、穏やかに微笑みました。
「二つの宝……? それは一体……」
「金の針と竜の髭(ひげ)。それさえあれば、たとえ記憶が霧に溶けても、愛した人の姿だけは永遠にこの世界に留まるだろう。……だが、それはこの街にはない。はるか彼方、青い天の川の岸辺、あるいは凍った雲の向こう側にあるという、イーハトーブの森に隠されていると言われているよ」
シルヴィンは椅子から立ち上がります。
「……そこへ行けば、私は彼女を忘却の淵から救えるのでしょうか。それとも、私が彼女を忘れてしまう前に、その森に辿り着けるのでしょうか」
南十字星は上着に袖を通すと、遠く、夜の底から「ポーッ」と、孤独で、けれどどこか懐かしい汽笛の音が響いてきました。
紳士は、星屑をまぶしたような銀の懐中時計を取り出し、カチリと蓋を開けます。
「おや……。そろそろ汽車の時間だ。私はあの列車に乗って、終点の街へ帰らなきゃいけないんだ」
紳士は帽子を軽く直し、まだ魔法にかけられたように立ち尽くすシルヴァンへ、穏やかに微笑みました。



