刺繍に込めた本当の幸福

「シルヴァン……! お願い、目を覚まして」

 シルヴァンは、遠い銀河の底から呼び戻されたかのように、ゆっくりと瞼を持ち上げました。彼は声の主を探して、うつろな目で店内を見渡します。

「……はい。どなた、……ですか?」

 ルミナは溢れる涙を止められぬまま、透明な腕で彼の肩を抱き寄せました。

「私よ、シルヴァン。あなたの隣にいた、ルミナよ!」

「ルミナ……様……でしょうか。……すみません、私は、そのお名前を……」

 困惑し、キョロキョロと何もない空間を見つめるシルヴァン。その時でした。
 彼の唇に、目に見えない、けれど確かな温もりを持った柔らかな感触が重なりました。

 同時に、彼の頬には、どこからともなく温かい雫(しずく)が零れ落ちたのです。
 その瞬間、シルヴァンの世界が激しく逆回転を始めました。

 コバルト中を数多くの光の筋が、背後から追い抜くように。

 窓の外の天の川が渦を巻き、バラバラに砕け散っていた記憶の破片が、一条の光となって彼の中に流れ込みます。