刺繍に込めた本当の幸福

 舞踏会の会場は、数えきれないほどのクリスタルが放つ淡い光に満たされ、訪れた人々が身に纏う宝石たちが、星図のように煌びやかに波打っていました。

 そこへ、あの紳士が姿を現しました。

 彼が着ているのは、シルヴァンが自分の影を切り裂いて縫い上げた、欲望で目を眩ませる「恋の洋服」です。その禍々しい魔法と、溢れんばかりの財力の輝きに、会場の女性たちはまるで毒のある花の香りに当てられたように、うっとりと陶酔の溜息を漏らしました。

 男性たちもまた、紳士の尊大な振る舞いと、その上等すぎる羅紗(らしゃ)の質感に、羨望と感心のどよめきを隠せません。

 紳士は、手にしたシャンパングラス越しに、会場を舐めるように見渡しました。
 その瞳には、冷たく卑俗な光が宿っています。

「どいつもこいつも、退屈な連中だ。私の傍らに飾る花は、もっと稀(まれ)で、魂ごと吸い取ってしまうほど美しい者でなければ」

 物色する紳士の目が、ふと、入り口近くで微風(そよかぜ)のように佇む一人の娘に釘付けになりました。

(ほう。これは、なんという……)

 彼女が纏っているのは、コバルトの夜空を切り取ったような、深く澄んだ青のドレス。動くたびに、裾の孔雀石(マラカイト)が波打ち、胸元の琥珀(こはく)が星のように瞬いています。