刺繍に込めた本当の幸福

「ありがとう、シルヴァン。あなたに、一番に見せてあげたいけれど……」

 鏡に映ったのは、ただの娘ではありませんでした。
 それは、誰かに死ぬほど愛されたという記憶そのものが、形を成したかのような気高い美しさでした

 彼女は鏡に映る自分の「本当の姿」を息を飲み愛おしそうに見つめます。

 喜びと、ほんの悪戯心で頬を緩ますと、会場でシルヴィンを驚かそうと、一人。夜の闇に浮かび上がる紳士の屋敷へと駆け出していきました。

 夜道を駆けるルミナのドレスは、星屑を振りまく箒星(ほうきぼし)のように尾を引いて輝きます。
 それは、イーハトーブの森へと続く、見えない線路をなぞっているかのようでした。

 彼女の足音が遠ざかると、入れ替わるように不気味な冬の星座が天高く昇り始めました。

 主を失った仕立て屋の店の隅では、あの赤いハサミが主人の帰りを待つように、鈍い光を宿したまま眠りについていました。