刺繍に込めた本当の幸福

 シルヴァンはレジカウンター奥の扉から、特別に置いていた洋服を取り出します。
 頬を緩ませ、鼻の下を指で擦ります。

「ルミナ様のために、心を込め糸を通しました」

「あらやだ。そんな丁寧な言葉で。でも素敵」

 それは粉雪のように真っ白い。ワンピースドレスでした。
 ドレスをシルヴァンが手渡すと。ドレスを受け取った『ルミナ』が、それを自分の体に合わせるように、ふわりと形を変えます。

「試着してもいいかしら?」

 シルヴァンは嬉しくて、何度も頷きました。

「ええ、もちろんです!」

 思わずルミナをエスコートしようと手を差し出しましたが、すぐに「おっと失礼」と慌てて引っ込め、彼女に背を向けました。

 自分の心臓の音が、静かな店内に響いてしまいそうで、シルヴァンは小さくなってその時を待ちました。

 待っている間。部屋に置かれた鏡に視線を向けると、そこには空中に浮くドレスが映りました。顔をシルヴァンは赤らめ、すぐさま視線を背けました。