刺繍に込めた本当の幸福

 やがて、窓の外に天の川が白く泡立ち、二つの洋服が完成を迎えた頃。

 シルヴァンの頭の中からは、かつてあれほど愛おしかったはずの「ルミナ」という記憶の最後の一片までもが、完全に消え去っていました。

 作業台の上には、神々しく輝く一着のドレスと欲望で汚れた服が並ばれています。
 そしてその傍らで、シルヴァンは、自分がなぜ泣いているのかさえ分からぬまま、空っぽになった心で夜明けを見つめるのでした。

 紳士を乗せたあの不吉な黒塗りの馬車が、再び店の前に横たわりました。
 完成した「恋の洋服」を抱えたシルヴァンの顔は、もはやコバルト色の影よりも青白く、足取りは今にも崩れそうなほどに、よろよろと覚束(おぼつか)ないものでした。

「いらっしゃいませ……。ご注文の品は、準備できておりますよ」

 紳士は鼻で「フン」とせせら笑い、受け取った洋服の出来栄えを確かめるでもなく、店の隅に静かに掛けられた、あの白いドレスを冷ややかな目で見つめました。

「ところで、仕立て屋。私は近いうちに屋敷で盛大な舞踏会を開き、この洋服を着て、ある『獲物』を仕留めようと思うのだが」

 紳士の傲慢な言葉が、まるで冷たい針のようにシルヴァンの胸を刺しました。

「……はい。左様でございますか」