あたしがイジメていたのは、――

「お茶持ってくる」

瑠奈が部屋から出て行く。

ドアが閉まったと同時に、バッと立ち上がった。

あたし今、クラスメイトの瑠奈の家にきている。

仲よくはないけど、部屋にこれたからラッキーだ。

あたしは窓辺に置いてあるクマのぬいぐるみの前で、口を開く。

「瑠奈をイジメていた記憶を消し– –」

「待って」

「っ!!」

バッと振り返ると…お茶を取りに行ったはずの瑠奈がいた。

「な、なんでっ!?」

こんなに早く戻ってくるなんてできないはず。

そもそも瑠奈、お茶を持っていない。

まるであたしがこの儀式をすると知っていたみたい– –

「三好さん」

腕組みして、瑠奈が言った。

「願い、『瑠亜をイジメていた記憶を消して』の間違いじゃない?」

「……は?」

あたしがイジメたのは――瑠奈でしょ?

「瑠亜は、私の双子の妹。アンタにイジメ殺しされた」

「…え?」

「そのショックで、あなたの記憶は改ざんされた。〝自分がイジメていたのは瑠奈〟ってね」

瑠奈がにっこり笑う。

けれど目は冷たく少しも笑っていなかった。

ヘナヘナと床に崩れ落ちる。

全部、思い出した。

「このクマを使って、最近話題の噂を試したかったんでしょ。〝クマのぬいぐるみに願いを言い、自分の爪を1枚剥がして、クマがいる空間に置く〟を」

「…そうだよ。でもうちにはクマがないから」

すると、瑠奈がベッドの下に手を入れた。

そこから取り出したのは、ハンマー。

手でとんとんと硬度をたしかめながら言う。

「瑠亜の復讐は、私自身がやるから」 

「…っ」

「改ざんされた記憶が戻ってよかった。じゃあ、ちょっと気絶してもらおうかな。起きたら三好さんは餓死してもらう!それが1番苦しい死に方みたい」

なにいってんの……餓死?

「ふ…ふざけんなっ!!」

「お好きにどうぞ。苦しむ運命は変わらないから」

すると、瑠奈の表情が変わった。

薄ら笑いがなくなり、表情という表情が抜け落ちる。


「簡単に、死なせるわけないでしょ」

ゴンッ!


– –「このクマは瑠亜が大切にしていたの。形見なんだよ」

意識が遠のく中、瑠奈の声が聞こえた。

目の前が真っ暗になる前に見えたのは、瑠亜の形見のクマ。

ニヤリと笑って見えたソレを最後に、意識がなくなる。




あたしがイジメていたのは――瑠亜。