僕が泣いていればしょうがないなと言いながら、僕が泣き止むまで傍に居てくれたのにどうしてお前は今、僕の傍に居ないんだ。
どうしようもないなと思っていれば、
「うっ…!」
「八重?」
急に胃の方から込み上げて来て口元を押さえた。
「章乃!」
「っちょっとどうしたの!?」
ガシャンと何かを乱雑に置く音共に、ゴミ箱が目の前に差し出されて思う存分吐いてしまった。
「八重どうしたんだ、具合でもわる、」
「八重さん」
吐き切ったのか嘔気は多少良くなり、背中を撫でる兄の隣に居た章乃さんに目をやれば真剣な眼差しだった。
ーーーこんなに真っ直ぐな目をする人が、匡獅の様に浮き名を流すのなんて何かの間違いだと思っていた。
しかしなんて事の無い。
彼女自身の芯から溢れる美しさに惹かれのだ。
彼女の輝きは文啓兄さんの傍に居る事でより輝いた。その輝きは子持ちになっても、変わらない。今だって病に冒されているとは思えない程、美しいまま。
羨ましい。
純粋にそう思える相手だった。
そんな彼女…章乃さんの、
「貴方まさか」
険しい顔とその言葉にーーー血の気が引いた。
嘘だ、そんな筈。
「無いよ、そんな僕には」
震えが止まらなかった。
嫌だ、僕は。
「…しっかりしなさい!」
「っ…」



