子供らに此処で待っている様に言って、中へと入る。
そこで目に入った光景は、
「あ、あ、私!なんて、事を…!」
ベットへと倒れる匡獅と彼女だった。
カランッと音を立てて、ペーパーナイフが床に落ちて行く。
見ての通り、彼女が匡獅を刺していた所だった。
………匡獅。
「や、八重さん…わた、私っ」
狼狽える彼女の横を通り過ぎて、ナイフを持って匡獅を見下ろす。
「や、え…っ」
真っ白なシーツの上で胸からは血が溢れるその姿は、何処かの高貴たる王族の死際を彷彿とさせるモノでこんな時でも芸術的な匡獅に、
「ふふ…」
笑いが込み上げる。
「や、」
「ああ分かってる」
苦々しく口から血を滴らせた匡獅の手を掴んだ。
胸に刺し傷、深さはそこまでで無いが下手したら死ぬかもしれない。
「匡獅」
「っ…や、え」
ベッドへと腰を下ろし、口の端から垂れる血を舐めとった。
額を合わせる。
僕の好きな甘い匂いがする。
「全部茶番だったな」
匡獅は分かっていた。
僕は知らないふりをした。
林檎を意識的に齧った匡獅と無意識に齧った僕。
僕等の飯事に付き合わせられる周囲や彼女、子供達に幾ら詫びても足りないだろう。決して地獄に落ちてもこの罪は洗われない。
どっちが罪深いと言われれば、きっと僕等は表裏一体だから罪深さも同じ。



