本当の私を知られたら終わる恋だと思っていたのに、彼の溺愛が止まりません


「何を読んでいたんですか?」
和木坂課長が今さっきまで読んでいた文庫本には、書店名の入った紙のブックカバーがかけられていた。

「ん?これ?」
和木坂課長は一番初めのページをめくって見せてくれた。
そこには沢木耕太郎の「深夜特急」と書かれていた。

「このシリーズが好きなんだ。自分も一緒に世界を旅しているような気持ちになる。」
「旅行がお好きなんですね。」
「ああ。学生の時は国内外、色んな所へ行ったよ。今は忙しくてなかなか行けないけどね。」

和木坂課長、ほんとに旅が好きなんだな。
こんなことすら、職場で見ているだけだったら、知ることは出来なかった。

和木坂課長は文庫本を黒いショルダーバッグに入れると、上野動物園のゲートへ向かって歩き出した。

「さ、行こうか。」
「はい!」