恋するオトメは超無敵っ!

「おにいちゃーん!」

 そう声をあげながら、軽やかに翔くんに飛びついたのは、彼の妹である阿万音(あまね)、小学四年生だ。
 耳の上のサイドポニーテールがチャームポイントで、クラスの男子にモテモテの妹ちゃんだ。
 となりにいるわたしに見向きもせず、阿万音は翔くんの腕にぶらさがる。
 そして、キラキラとした瞳でねだるように、翔くんを見あげた。

「ねえ、おにいちゃん。いまからお出かけなんでしょ? おねがい! あたしも連れていって!」

 すると、翔くんは妹ちゃんのおでこを、手のひらでグイッと押した。

「だ~め! 危ないから」
「お~ね~が~い~」
「だめったら、だめ!」
「もう! おにいちゃんのケチ!」

 ぷっとふくれた妹ちゃんを見ながら、わたしは心の中で考える。

 待って、待って。
 普段はクールな翔くんなのに。
 妹ちゃんと一緒にいるところをみるの、はじめてだけれど。
 妹ちゃんには、すごくやさしい?!

 いいなあ。
 翔くんのこんな声、いままで聞いたことがないよ。
 その妹ちゃんを見るまなざし、たちまち胸を射抜かれちゃいそうだ。
 すっごく、うらやましい!

 なんてことを考えていたわたしのほうへ、急に阿万音ちゃんが振り向いた。

「なによ。あなた、なに見てるのよ。関係のない人は、おにいちゃんに近寄らないでよ」

 翔くんの腕に抱きついて、わたしを睨んでくる。
 そんな阿万音ちゃんの様子から、わたしは、これ以上はもう、ここで翔くんに話しかけるのは、ムリかなと考えた。
 しつこく食いさがるより、さわやかに去ったほうが、少しでも印象がいいかも。

「わかったわ。翔くん、またね」

 にっこり笑って、わたしはその場から退散することにした。

 それにしても、わたしの恋路に立ちふさがるブラコン妹ちゃん、これは難題だわ。

 そう考えながら、わたしは気合いをいれるように、ポニーテールにしている髪を、両手でキュッと引っ張った。