恋するオトメは超無敵っ!

『神代翔くん、急いで職員室へきてください』

「翔! なにやらかしたんだよ!」

 面白がった表情の大吾が、すぐさま声をあげる。
 翔くんは返事をせずに、そばにいたマジメ女子の里中さんへ、消しゴムを手渡した。
 ついでに、ほうきもあずける。
 すると、里中さんは、パッと頬を赤らめた。

 うんうん。
 わかるよ、里中さん!
 翔くんに手渡されただけで、もう一日、ハッピーだよね!

 そして、カバンを肩にかけた翔くんの後ろで、クラスメイトの声が追いかけてきた。

「あ~あれだ。また、翔のじっちゃんじゃねー?」
「最近いっつも、家の鍵を借りに学校にくるよなあ。翔のじっちゃんって」

 わたしは少し考えて、すぐにピンとくる。
 職員室にきているのは、きっとサコ爺だ。
 これから都市伝説の実体化した怪異を斬るために、翔くんを迎えにきたんだろう。

 翔くんが廊下に出てくる前に、わたしは慌てて、教室から離れた。
 そして、いかにも偶然、ここにいましたよ~って表情で、彼を待つ。

 けれど、待っているわたしの胸は、さっき以上にドキドキ。
 だって、自分から翔くんに話しかけるの、はじめてだから。

 そんなわたしの前に、翔くんが教室から出てきた。
 廊下に立っているわたしを見て、一瞬足を止めた翔くんは、驚いたように、ちょっと眉をあげた。

「いまからおでかけかな? 翔くん」

 含みのあるわたしの言葉に、驚いた表情から、翔くんは睨む目つきに変わった。

「――だれにも言うなって、言ったよな?」

 クールな王子さまらしく、声も言葉もひんやりだ。

「もちろん! だれにも言っていないわよ。でも、わたしは、翔くんがやっていることを知っているのよね……」

 そう言って、わたしは翔くんへ向かってにんまり笑う。
 やだ。
 緊張で、笑顔が変になっちゃったかも!
 ああ、もっとかわいい笑顔を、鏡に向かって練習しておけばよかった……。

「ぼくを、脅迫する気か」
「やだな。違うって。わたしは、翔くんのお手伝いをしたいだけ」

 呼ばれていたことを思いだしたように、翔くんは、職員室へ向かって歩きだした。
 わたしも、急いで駆け寄ると、翔くんの横に並ぶ。

 一緒に並んで歩くなんて、夢みたい。
 ずっと胸がドキドキしているけれど、翔くんに聞こえていないかな。
 急に心配になってきちゃったけれど。
 でも、いつまでも、この幸せな時間が続くといいなあ……。

 なんて考えていたわたしへ向かって、翔くんは歩きながら冷たく言った。

「手助け? きみが? あのときも、きみは悲鳴をあげるだけで、なにもできなかったじゃないか」
「あのときとは違います! ちゃんと準備していたら、翔くんのサポートくらい、できるんです!」

 翔くんには、まだ正体を伝えていないけれど、わたしはくノ一だものね。

 でも、強気で言ったわたしを、翔くんは鼻で笑った。
 わたしは、翔くんに食いさがる。

「翔くんは、都市伝説を斬れるんでしょう? わたしは、都市伝説を斬ることはできない。けれど、翔くんが都市伝説を斬れるように手助けができる。いいパートナーになれると思うんだけれどなあ」
「むり。一般人なんか、連れていけるか。ってか、なんでそれを知っているんだよ」

 そう言って、翔くんがわたしをいぶかしげに睨んだとき、廊下の向こうから、ひとりの女の子がタタタッと駆けてきた。