恋するオトメは超無敵っ!

「翔くん……」

 声をかけようと思って、やめる。
 きっと、疲れたんだよね。

 窓のほうへ顔を向けて、静かに寝ている翔くんの手から、半開きの本を抜き取る。
 翻訳された小説だろうか、カタカナのタイトルで、文字がびっしり。
 なんだかむずかしそうな本だ。

 わたしは、前の席の背にくっついてある、小さなテーブルの上に、本を置いた。
 そんなわたしに、サコ爺が言った。

「翔くんは、この数日間で、表情が豊かになった気がしますね。凛音さんのおかげでしょうか」
「え? 本当に? そうかな?」

 サコ爺からそう言ってもらえて、嬉しいな。

 休み時間、ただ教室の机の前に座って、無表情で本を読んでいた翔くん。
 この件にかかわって、わたしも、翔くんの驚いた顔も怒った顔も、それに困惑した顔も辛そうな顔も見たもの。
 いつか――思いっきり笑った顔が、見たいなあ。

 サコ爺が、話を続ける。

「なんでもできるからといって、私がすべて一人でやるわけにはいきません。手助けも限界がありますし、翔くんを十一代目として育てなければならない」
「はい」

 わたしは、神妙な表情でうなずく。

「でも、ここ数日間のきみを見ていて、サポート役に特化したきみが一緒であれば、翔くんもきみも、うまく育つ気がします」

 わたしは、パッと顔を輝かせた。
 サコ爺のほうへ、ガバッと身を乗りだす。

「それって?」
「ええ。私からもお願いしますよ。これからも、翔くんのお助け係をしてもらえるかな」
「もちろん!」

 わたしは、満面の笑顔で返事をする。
 そして、翔くんを起こさないように、控えめにガッツポーズをする。

 そんなわたしに向かって、サコ爺が続けた。

「じつは、凛音さんのおじいさまとは、すでにお話がついております」
「え?」
「凛音さんは、おじいさまからの修行を、真面目にうけていらっしゃらなかったと。ですが、実際に体験しながら知識を養い経験を積むというのも、ありでしょうと、おじいさまから許可をいただきました」
「そうだったんだ……」