恋するオトメは超無敵っ!

 全身に、ゆらりと怒りのオーラをまとった翔くんは、おもむろに刀を鞘から抜いた。

「――なんだって? 都市伝説が、なにが原因で実体化したのかと思ったら……」
「そうじゃよ。ワシは、若いオトコが好きなんじゃ! ガキなんかに用はないわ!」

 そう叫んだ瞬間、おばあさんは跳んだ。
 そして、からかうように甲高い笑い声を立てながら、翔くんの周りを、シュバッ! シュバッ! と跳ねまわる。
 やがて、ひときわ高く跳びあがると、そのまま橋の向こう側へ方向を変えた。

「あ、逃げるつもりだ! サコ爺は、ここで見張っていて!」

 わたしは、うなずくサコ爺のとなりから、勢いよく飛びだすと、駆けだした。

「HAIナビ! ジャンピングばばあを追跡して!」
『了解』

 イヤフォンを通して、AIの合成音が聞こえる。

『そのまま西の方向へ直進』
「りょーかい!」

 わたしは橋を駆け抜け、まっすぐ走る。

 刀を手に、翔くんもわたしの後ろを駆けてくる。
 でも、断然わたしのほうが速い。
 それは、まあ、花子さんのときにわかっていたけれどね!

 十字路のたびに、わたしはAIナビに確認しながら追いかける。
 予想どおり、すぐに、後ろを走っていた翔くんは、見えなくなった。

 うん。
 知っていた。
 わかっていた。
 それは仕方がないことだよね。
 女の子に負けるのはイヤかもしれないけれど、適材適所って言葉があることだし。
 なので、お助け係のわたしが、ひたすらおばあさんを追いかけるよ。
 翔くん、ドンマイ!

 実体化しているためか、おばあさんは、そのまま姿をかき消すことはないようだ。
 そして、ジャンピングばばあは、名前のとおり、飛び跳ねる。
 ずっと飛んでいるわけじゃない。
 道路におりて、また跳ねあがる。

 下におりた瞬間に、わたしがおばあさんをつかまえて、そのあいだに翔くんに駆けつけてもらって、刀で斬ってもらうパターンかな。
 わたしは、頭の中で、そう作戦を考える。

 おばあさんは縦に跳ぶから、身体能力があがっているわたしは、そこまで引き離されるわけじゃない。
 年寄りなのに、素早い動きだけれど。
 どうにか視界にとらえたまま、わたしは、おばあさんを追いかけ続けた。