恋するオトメは超無敵っ!

 ひととおりの情報確認をしたわたしは、行動に移した。
 同じ小学校の校区内だもの。
 いままで遊びに行ったことはなかったけれど、翔くんの家は、隣の丁目にあるお寺だと知っている。
 家の近くにいけば、ひょっとして、偶然、翔くんと出会っちゃうかもしれない。
 きゃっ!
 どうしょう!?

 なんて考えたわたしは、動きやすさを考えつつ、ちょっとおしゃれなパンツルックだ。
 以前の、男子と間違えられるわたしの服装を考えたら、オトメとしては進歩よね。
 鏡のまえでくるりと一回転してみた。
 うん。ばっちり!
 それから、彼の家を目指して家をでる。

 近くなので、歩いて五分くらいで到着。
 ずっと続く、長い白壁でぐるりと囲まれた、敷地が広いお寺だ。
 いままで意識したことないけれど。これ翔くんの家だと思うと、それだけで、なんだかテンションあがるよね。

「ここが、翔くんが暮らしているお寺なんだ……」

 大きな門の前を通りかかりながら、横目で、わたしはそうつぶやいた。
 そのとき。
 門の向こう側に立っていた、ひとりの男の人と、偶然目が合った。
 六十歳を過ぎたくらいの、スーツ姿が似合ったおじさんだ。
 そして、目が合った瞬間。
 わかった。
 わたしは、全身、ぞわっと総毛立つ。

 ――このおじさんは、忍びであるわたしより、強い。

 あのとき出会ったモノとは、空気が違う。
 体の奥で鳴り響く警戒音。

 わたしは、考える前に、パッと身をひるがえしていた。
 壁沿いに、来た道を戻るようにダッシュする。


 そんなわたしを、おじさんは、足音もなく追いかけてくるのがわかる。

 こわい。

 こわい。

 こわい!

 あっさりわたしを追い抜いたおじさんは、振り返ると両手を広げて、行く手をさえぎった。
 パニックになりながらも、わたしは一瞬かがんで、地面を蹴る。
 高く跳びあがって、壁の上に着地しながら、ポケットの中に隠していた小瓶を取りだしてフタを開けた。

春花(しゅんか)の術!」

 玖珂家特製の粉が舞う。
 護身用の忍びアイテム、吸えばたちまち眠っちゃう植物の粉だ。

 なのに、おじさんは風を読んだように粉をよけると、壁の上のわたしの足首をつかんで、簡単につかまえてしまった。
 逆さ吊りにぶらんとぶらさげたわたしに、温和な笑みを向けて、おじさんは言った。

「――春花の術か。以前に聞いたことがある。さてはおじょうちゃん、くノ一だな?」