恋するオトメは超無敵っ!

 バスをおりてから、サコ爺の持つ地図を頼りに歩く。
 やがて、交差点にさしかかり、その向こうに、川と橋が見えた。
 それほど大きくない川にかかる、茶色い手すりが設置された橋だ。

「なんだ、普通の橋だよね。おかしい気配は感じられないなあ」

 わたしは、伸びあがって、橋の柵から下の川を見下ろした。

「そうだね。ぼくの刀も、鍔鳴りがしない。いまは、いないな」
「その鍔鳴りって、前にも聞いたよね? どういう意味なの?」

 わたしは、翔くんにたずねる。
 翔くんは、橋の周辺に視線を向けながら説明をしてくれた。

「鍔鳴りは、もともとは、刀を鞘におさめるときに鯉口(こいくち)と打ち合って鳴る音だ。でも、都市伝説の気配を感じたとき、この刀は共鳴するように音をだすんだ」
「そうなんだ! 妖気探知機みたいで、便利だね」

 そう言ったわたしを、翔くんはじろりと見た。
 妖怪探知機とか便利とか、安っぽく聞こえちゃって、いやだったのかな?
 アハハっと笑ってごまかしたわたしと、睨んでいる翔くんに、サコ爺が声をかけた。

「気配がないのであれば、お昼も過ぎましたし、どこかで昼食にしましょうか」
「賛成!」

 わたしはすぐに、びしっと手をあげた。



 しばらく歩いて見かけた喫茶店に、わたしたちは入る。
 窓際で、ふたりずつ、向かいあって座る四人席があいていた。
 わたしは素早く、窓を背にして座る。
 なぜなら、サコ爺と翔くんが向かい合って座ったとしたら「えへへ~。おとなり、ちょっといいっすか~? どうもどうも、すみませんね~」なんて言いながら、翔くんの隣に座るなんて、恥ずかしいじゃない?
 微妙な乙女心よ。
 なので、ここはずうずうしく、最初に座らせていただいた。

 普通に考えたら、サコ爺がひとりで座って、その前にわたしと翔くんが並ぶかな?
 それとも、わたしがひとりで、向かい側に、サコ爺と翔くんが並んで座るだろうか?
 その構図は、ちょっと悲しいかも……。

 なんて、わたしがひとりで緊張していたんだけれど。
 あっさり翔くんは、わたしの横に無言で座った。
 サコ爺が、前にひとりで座る。

 ああ、翔くんと、同じテーブルで、並んで座っているなんて。
 なんだかもう、それだけでわたしは幸せよ!