たしか、以前聞いたことがある口裂け女の情報では。
喜ぶ言葉を言えばいいって聞いた気がするから……。
「えっと。お姉さん、かわいい系ですね」
すると、おもむろに口裂け女は、マスクを外しながら言った。
「これでも?」
そこには耳まで大きく裂けている口!
その口がゆっくり上下に開くと、奥から真っ赤な舌がうごめいた。
わたしが息をのむ間もなく、口裂け女は両手をあげる。
その指さきの爪は、鋭くとがっていた。
じゅうぶん凶器!
ヤバイ!
わたしはとっさに阿万音ちゃんの腰に両手をまわして縦抱きすると、後方に大きく跳び退った。
わたしたちがいた場所で、口裂け女の手が空振りする。
「きゃあ!」
阿万音ちゃんの悲鳴あがる。
「いきなり何するのよ!」
「少し黙って!」
阿万音ちゃん自身は軽いけれど、ランドセルは大きくて重い。
さらに数歩跳ねながらさがったけれど、バランスをとるのが難しい。
口裂け女は真っ赤な口を大きく開きながら両手をあげて、ゆらりと歩を進めた。
――あ。実体化している時点で、これ、間違いなくお祓い案件じゃない?
「阿万音ちゃん! あなた、怪異を祓えるの? 翔くんの刀以外に、あなた専用で持っているお祓い道具ってあるの?」
「気安く名前を呼ばないで!」
「非常事態! 持っているの?」
「――持ってないもぉん」
唇尖らせながら、阿万音ちゃんは渋々つぶやいた。
わたしは阿万音ちゃんを片手で抱きなおすと、口裂け女の動きを警戒しながら、片手で携帯コンピューターから取り外した無線イヤフォンを装着した。
「HAIナビ! サコ爺へ連絡!」
『了解』
すぐにサコ爺の携帯へコールする音のあと、かちゃりとつながった気配がした。
「サコ爺! 通学路に実体化した怪異!」
叫ぶのと同時に、接近してきた口裂け女の攻撃をよける。
そのまま通信が切れたけれど、サコ爺ならこれで通じるはず。
きっと、翔くんの家から逆に辿って、助けにきてくれるはずだ。
ただ、場所を指定で連絡した手前、通学路から離れないようにしなきゃね。
大きく腕を振り回す口裂け女の脇をかいくぐり、わたしは翔くん家となるお寺へ向かって駆けだした。
縦抱きした阿万音ちゃんが、追いかけてくる口裂け女の状況を叫ぶ。
「やだ! すっごく足が速い」
わたしはスピードをあげる。
体力を温存している場合じゃない。
「追いつかれちゃう! もっと速く走って!」
「無理いわないでよお」
阿万音ちゃんのランドセルは重いうえに、わたしの視界を狭くしている。
それでも、一気に身体を沈めると、わたしは大きくジャンプして、横の壁の表面に飛び移って駆けた。
同時に、ポケットから撒菱を取りだしてばらまく。
わたしは、それを飛び越えるようにして壁から元の道に飛び降りると、ふたたびダッシュで走りだした。
後ろから追いかけてきた口裂け女は、そのまま撒菱ゾーンに突っこんだようだ。
うっかりハイヒールで撒菱を踏んだらしくバランスを崩し、否応なしに足止めされているのだろう。
背後から、言葉にならない悲鳴と罵詈雑言が聞こえた。
ふふふ、見たか!
玖珂家特製、ヒシの実を乾燥させて作った地球にやさしい植物由来の撒菱よ!
いまのあいだに距離を広げなきゃ。
わたしは一段とスピードをあげる。
そして、角を曲がったとき。
喜ぶ言葉を言えばいいって聞いた気がするから……。
「えっと。お姉さん、かわいい系ですね」
すると、おもむろに口裂け女は、マスクを外しながら言った。
「これでも?」
そこには耳まで大きく裂けている口!
その口がゆっくり上下に開くと、奥から真っ赤な舌がうごめいた。
わたしが息をのむ間もなく、口裂け女は両手をあげる。
その指さきの爪は、鋭くとがっていた。
じゅうぶん凶器!
ヤバイ!
わたしはとっさに阿万音ちゃんの腰に両手をまわして縦抱きすると、後方に大きく跳び退った。
わたしたちがいた場所で、口裂け女の手が空振りする。
「きゃあ!」
阿万音ちゃんの悲鳴あがる。
「いきなり何するのよ!」
「少し黙って!」
阿万音ちゃん自身は軽いけれど、ランドセルは大きくて重い。
さらに数歩跳ねながらさがったけれど、バランスをとるのが難しい。
口裂け女は真っ赤な口を大きく開きながら両手をあげて、ゆらりと歩を進めた。
――あ。実体化している時点で、これ、間違いなくお祓い案件じゃない?
「阿万音ちゃん! あなた、怪異を祓えるの? 翔くんの刀以外に、あなた専用で持っているお祓い道具ってあるの?」
「気安く名前を呼ばないで!」
「非常事態! 持っているの?」
「――持ってないもぉん」
唇尖らせながら、阿万音ちゃんは渋々つぶやいた。
わたしは阿万音ちゃんを片手で抱きなおすと、口裂け女の動きを警戒しながら、片手で携帯コンピューターから取り外した無線イヤフォンを装着した。
「HAIナビ! サコ爺へ連絡!」
『了解』
すぐにサコ爺の携帯へコールする音のあと、かちゃりとつながった気配がした。
「サコ爺! 通学路に実体化した怪異!」
叫ぶのと同時に、接近してきた口裂け女の攻撃をよける。
そのまま通信が切れたけれど、サコ爺ならこれで通じるはず。
きっと、翔くんの家から逆に辿って、助けにきてくれるはずだ。
ただ、場所を指定で連絡した手前、通学路から離れないようにしなきゃね。
大きく腕を振り回す口裂け女の脇をかいくぐり、わたしは翔くん家となるお寺へ向かって駆けだした。
縦抱きした阿万音ちゃんが、追いかけてくる口裂け女の状況を叫ぶ。
「やだ! すっごく足が速い」
わたしはスピードをあげる。
体力を温存している場合じゃない。
「追いつかれちゃう! もっと速く走って!」
「無理いわないでよお」
阿万音ちゃんのランドセルは重いうえに、わたしの視界を狭くしている。
それでも、一気に身体を沈めると、わたしは大きくジャンプして、横の壁の表面に飛び移って駆けた。
同時に、ポケットから撒菱を取りだしてばらまく。
わたしは、それを飛び越えるようにして壁から元の道に飛び降りると、ふたたびダッシュで走りだした。
後ろから追いかけてきた口裂け女は、そのまま撒菱ゾーンに突っこんだようだ。
うっかりハイヒールで撒菱を踏んだらしくバランスを崩し、否応なしに足止めされているのだろう。
背後から、言葉にならない悲鳴と罵詈雑言が聞こえた。
ふふふ、見たか!
玖珂家特製、ヒシの実を乾燥させて作った地球にやさしい植物由来の撒菱よ!
いまのあいだに距離を広げなきゃ。
わたしは一段とスピードをあげる。
そして、角を曲がったとき。


