恋するオトメは超無敵っ!

 わたしは、つとめて明るい声で、翔くんに声をかける。

「花子さん、わたしたちと遊んで、楽しんだかな。満足してもらえたかな」
「――」

 翔くんは、言葉なく、小さくうなずいた。

「肉体を持った都市伝説は、これからも、悪いだけのものばかりじゃないと思う。辛いときが、あるかも」

 わたしは、小さな声で続けた。

「でも、わたしもいるから。翔くんは、ひとりじゃない」

 驚いたように目を見開いて、翔くんはわたしを見た。
 とたんに、わたしは、自分の言葉が恥ずかしくなった。
 照れ隠しに、わたしは翔くんの背中を、ぱぁんと叩く。

「ほらあ。次よ、次!」
「そうですね。もう時間も遅いですし、移動いたしましょう」

 朗らかにサコ爺もそう言いながら、両手のひらを合わせて、ポンと叩く。

「それでは、職員室へ行って、先生方に報告をいたしましょうか。そのあと、食事に行きましょう。おふたりとも、なにが食べたいですかな?」
「え? なんでもいいの?」
「ええ、遠慮はなさらず、なんでも言ってください」
「それじゃあ、わたし、熱々のステーキかな! お寿司も捨てがたいな! 中華もいいよね! デザートもつけたいな! ねえ、翔くんは、なにが食べたい?」

 わたしは笑顔で、翔くんの顔をのぞきこんだ。
 聞き取れないくらいの声で、翔くんがつぶやく。
 わたしは、彼の口もとへ耳を寄せた。

「ん? 翔くん、なあに?」
「パスタがいいって言ったんだよ。くっつくなって!」

 ぶっきらぼうに言いながら、翔くんは、近づいていたわたしの頭を、ぐいーっと押し返した。

「え~? そこまで邪険にすること、ないじゃない!」

 わたしは、プッとほおをふくらます。
 それからわざと、男の子同士がするように、冷たい目を向ける翔くんの肩に、腕をまわした。
 わたしと翔くん、いまは同じくらいの背の高さだから、できることよね。
 翔くんが文句を言う前に、わたしは彼を引きずるように歩きだす。

「ほらぁ、いくよ! 翔くん!」

 そして、先に歩きだしたサコ爺のあとを、ふたりで追った。



 無口で、クールな翔くん。
 わたしが思っていた以上に、彼は、あたたかい感情を持った男の子だ。
 そんな翔くんが、辛く悲しい体験をするときには、わたしも一緒に辛さと悲しさを分け合って、お互いに支えたい。
 そして、嬉しいときは手を取り合って、一緒に笑い合いたい。

 わたしはそう、新たに決心するのです。