恋するオトメは超無敵っ!

 そして、二階の廊下で、わたしたちはうまく花子さんを見つけた。

 わざと花子さんの目の前で、わたしがサコ爺にタッチをする姿を見せた。
 そのあとで、サコ爺がわたしを超えるスピードで駆けていき、花子さんにタッチをする。
 この流れを見たことで、花子さんは、サコ爺と翔くんも、鬼ごっこに参加していると認識したらしい。
 四人で、学校中を使った鬼ごっこになった。

 日が暮れた田舎町の、古い校舎の中で、小さな女の子の、甲高い笑い声が響く。
 聞こえる範囲の家では、さぞかし恐怖だったのではなかろうか。
 そして、その渦中である職員室でも。
 あのふたりの先生、いままで花子さんをみたことがないって、言っていたけれど。
 笑い声が聞こえているであろうこの状況で、ブルブルと震えていたのではなかろうか。

 サボりぎみとはいえ、忍びの訓練を小さいころから受けていたわたしと、疲れ知らずの花子さん。
 そして、わたしを超える実力の持ち主であるサコ爺。
 そんな中で、やがて最初にバテたのは、翔くんだった。

 刀を握りしめた両手をひざにつき、肩で大きく息をしながら、翔くんは、わたしを睨みつける。

「刀のせいだよ! 刀が重いんだ! 刀を持って走っているのは、ハンデだと思うぞ!」
「そんなこと言ってもぉ。翔くん、男の子じゃない?」

 わたしは、唇を尖らせながら身をくねらせた。
 しらじらしく、斜め上へ視線を向ける。

「サコ爺は、昔から鍛えているから知っているが。凛音、おまえも体力バケモノだ……」
「女の子に向かって、バケモノとは失礼ね! 翔くんが運動不足なのよ!」

 ムッとしたわたしは、すぐさま言い返す。
 でも、わたしは知らず知らずのうちに、笑みを浮かべるように表情がゆるんだ。

 だって、学校では、ずっと自分の席で本を読んでいるような翔くんだ。
 その彼が、小さい女の子と、六十を超えたおじいさんと、そしてわたしと鬼ごっこ。
 面白いっていうか、楽しいじゃない?

「とはいっても、日が暮れてから、そろそろ二時間がたちますね」

 まだまだ体力がありそうなサコ爺が、腕時計を見ながら言った。

「え……? マジで? 二時間も走りまわったのかよ……」

 天を仰ぎながら壁に寄りかかり、翔くんがつぶやいた。
 そのまま、ずるずるっとしゃがみこむ。

 現在、鬼になっている花子さんは、わたしたちがいる図工室にやってきていないっぽい。
 わたしは、図工室の、開けっ放しのドアから外をうかがいながら言った。

「う~ん、そろそろだれかが、鬼の交代をしたほうがいいかも。じゃないと、花子さん、鬼ごっこは終わりだと思って、また隠れちゃうかもしれない」
「それはマズいな。また、別の日に改めてここまでくるのも、大変だよな……」

 壁にもたれて、しゃがんでいた翔くんだったけれど。
 ようやく覚悟を決めたのか、片手でひざを叩いて立ちあがる。

「よし。ここからでて、廊下を走って移動するか」
「そうね」