「あれ? おかしいな? 引っかかっているのかな?」
簡単に開かないことに、わたしはちょっとムッとした。
だから、力をこめて引っ張る。
それでも開かない。
いったん手を放して、わたしは気合をいれる。
「おい! 凛音! 気をつけろ! ぼくの刀が鍔鳴りを起こしている!」
「え? 鍔鳴りって、なによ?」
うわの空で、わたしは翔くんに聞き返しながら、目の前のドアを思いっきり引っ張ろうとして――いきなり内側から、勢いよく開いた。
ドアの向こう側には、だれの姿もいないはずだ。
生徒は全員、下校しているはずだもの。
なのに。
わたしは、おそるおそる視線をさげる。
すると、手を伸ばせば届くところに、ひとりの女の子が立っていた。
白いブラウスに赤いスカート。
おかっぱに切りそろえられた黒髪の、小さな女の子。
その女の子は、下からすくいあげるように顔をあげると、かくん、と首をかしげた。
吸いこまれそうな、大きくて、真黒な瞳。
目が、合っちゃった。
そして。
「あ・そ・ぼ」
「ひっ!」
わたしは、両手で口をふさいだ。
けれど、花子さんから、視線がそらせない。
わたしは、じりじりと、あとずさりして――一気にドアのほうへ向かって駆けだした。
「あっぶねえ!」
外で様子をうかがっていたらしい翔くんは、バァンとわたしが勢いよく開いたドアに、ぶつかりそうになる。
「凛音、どうなってい……」
「でた! でた! 花子さん!」
体の奥からわきあがる恐怖で、わたしは廊下を走りながら叫ぶ。
そして、逃げるわたしの真後ろに、甲高い笑い声をたてながら、ぴったりついてくる花子さん!
「ま・っ・て」
「なんで? どうしてついてこれるのよ!」
わたしって、逃げ足がメチャクチャ速いんですけれど!
どうしても、花子さんを振り切れない!
振り返ると、おくればせながら、わたしと花子さんのあとを、翔くんとサコ爺も追いかけてくるのが、はるか遠くに見えた。
でも。
でも!
そのあいだに、わたしは、トイレとは反対側の、廊下の行き止まりに追いつめられちゃったの!
あ~ん!
こんなことになるなら、あのとき九字の呪文で、恐怖耐性をつけておけばよかった!
壁を背に、わたしはヘタリと、腰が抜けたように座りこむ。
その前に、口をにんまりゆがませた、おかっぱ頭の花子さん。
わたしのほうに、ついっと片手を伸ばして。
そして。
「つ・か・ま・え・た」
ピトッと、手のひらを、わたしの肩にふれた。
「こ・ん・ど・は」
わたしの、耳もとに口を寄せて、ささやく。
「つ・か・ま・え・て・ね」
――え?
顔をあげると、花子さんは、わたしに背中を向けて、パタパタと走りだした。
簡単に開かないことに、わたしはちょっとムッとした。
だから、力をこめて引っ張る。
それでも開かない。
いったん手を放して、わたしは気合をいれる。
「おい! 凛音! 気をつけろ! ぼくの刀が鍔鳴りを起こしている!」
「え? 鍔鳴りって、なによ?」
うわの空で、わたしは翔くんに聞き返しながら、目の前のドアを思いっきり引っ張ろうとして――いきなり内側から、勢いよく開いた。
ドアの向こう側には、だれの姿もいないはずだ。
生徒は全員、下校しているはずだもの。
なのに。
わたしは、おそるおそる視線をさげる。
すると、手を伸ばせば届くところに、ひとりの女の子が立っていた。
白いブラウスに赤いスカート。
おかっぱに切りそろえられた黒髪の、小さな女の子。
その女の子は、下からすくいあげるように顔をあげると、かくん、と首をかしげた。
吸いこまれそうな、大きくて、真黒な瞳。
目が、合っちゃった。
そして。
「あ・そ・ぼ」
「ひっ!」
わたしは、両手で口をふさいだ。
けれど、花子さんから、視線がそらせない。
わたしは、じりじりと、あとずさりして――一気にドアのほうへ向かって駆けだした。
「あっぶねえ!」
外で様子をうかがっていたらしい翔くんは、バァンとわたしが勢いよく開いたドアに、ぶつかりそうになる。
「凛音、どうなってい……」
「でた! でた! 花子さん!」
体の奥からわきあがる恐怖で、わたしは廊下を走りながら叫ぶ。
そして、逃げるわたしの真後ろに、甲高い笑い声をたてながら、ぴったりついてくる花子さん!
「ま・っ・て」
「なんで? どうしてついてこれるのよ!」
わたしって、逃げ足がメチャクチャ速いんですけれど!
どうしても、花子さんを振り切れない!
振り返ると、おくればせながら、わたしと花子さんのあとを、翔くんとサコ爺も追いかけてくるのが、はるか遠くに見えた。
でも。
でも!
そのあいだに、わたしは、トイレとは反対側の、廊下の行き止まりに追いつめられちゃったの!
あ~ん!
こんなことになるなら、あのとき九字の呪文で、恐怖耐性をつけておけばよかった!
壁を背に、わたしはヘタリと、腰が抜けたように座りこむ。
その前に、口をにんまりゆがませた、おかっぱ頭の花子さん。
わたしのほうに、ついっと片手を伸ばして。
そして。
「つ・か・ま・え・た」
ピトッと、手のひらを、わたしの肩にふれた。
「こ・ん・ど・は」
わたしの、耳もとに口を寄せて、ささやく。
「つ・か・ま・え・て・ね」
――え?
顔をあげると、花子さんは、わたしに背中を向けて、パタパタと走りだした。


