恋するオトメは超無敵っ!

 背の高い木のかげから、わたしは、そおっと顔をのぞかせた。
 翔くんの表情がわかるくらいの距離だ。
 わたしの目の前で、白いワニと翔くんが睨み合っている。

「え? ちょっと待って? ワニって、わたしの身長の倍、あるんじゃない?」

 ということは、三メートル以上の大ワニってことだ。
 ワニは、いつでも水の中に逃げこめられるようにだろうか。
 池の縁で身構えている。

「さあ、ワニさん。まずは住民じゃなくて、ぼくを襲いにこいよ……」

 白いワニに向けて刀をかまえた翔くんは、真剣な表情だ。
 強気で挑発する、つぶやくような声が、わたしのところまで聞こえてくる。

「ヤダもう、カッコいい……」

 なんて、翔くんに見とれている場合じゃないよね。
 わたしは、手助けをするタイミングを、ジッと待つ。

 一歩進んで、翔くんは真正面から斬りかかった。
 とたんに、さがって水の中に潜るワニ。
 と思ったら、翔くんに向かって、弾みをつけて一気に飛びだしてきた。
 あれは、水の中に潜ることで助走をつけたんだ。

「翔くん、危ない!」

 思わずわたしは、叫びそうになったけれど。
 まだ、呪文の効果で冷静さが失われていないわたしは、声を出さずにグッと耐える。
 翔くんは、刀を横に払って、飛びかかったワニの口から逃れた。

「あっぶねえ!」

 翔くんが刀を構えなおすころには、ワニはまた、水中に潜った。

「あんなにデカく育っているのか……。どこだ? どこからくる……?」

 翔くんは、耳をすましながら、ジッとワニが消えた水面を睨みつける。
 すると、今度は左側の水面に、ばしゃんと大きな水しぶきが。
 翔くんがハッと刀の切っ先を向けた瞬間、右側から、ワニが飛びだしてきた。
 大きく口を開ける。

 うそっ?
 このワニ、しっぼで水面を叩いて、翔くんの注意をひいたの?
 そこまで怪異のワニは、考えられるってこと?

 わたしが口を押えて見守る前で、翔くんはバランスを崩して地面に片手をついた。
 それでも、体をひねると刀を返して、ワニの口に向ける。

 刀をよけたワニの口は、翔くんの体をかすめるように閉じられた。
 すぐにワニは、水中へ素早く逃げこむ。

 地面に手をついた翔くんが、立ちあがろうと視線をそらせた、その一瞬で。
 また姿を見せたワニが体を回転させて、大きな尻尾を勢いよく振った。

「あっ!」

 翔くんの手から、刀が弾き飛ばされる。
 そして、翔くんの後ろの土の地面に落下して、縦にさっくりと刺さった。

 もう怖いものはないとばかりに、翔くんの目の前で、ワニは水中からゆっくりと、全身をみせる。

 刀を取るために、翔くんが振り向いて視線をはずしたら。
 ワニは一気に、噛みつきにいく気だ!