恋するオトメは超無敵っ!

 異様な気配が感じられたのは、公園の中の大きな池。
 そのまわりには、ぐるりと転落防止の格子柵が立てられてある。
 でも、格子柵の下のほうは、わたしでもすり抜けられそうなガバガバな柵だ。

 その池から、道をはさんで、数メートル離れた茂みの後ろで立ちどまった。

 ――いまから、わたしにとって、はじめての都市伝説狩りだ。
 この一戦で、わたしなりの翔くんのサポートや戦い方を、彼とサコ爺に認めてもらわなきゃね。

 わたしは、携帯コンピューターを取りだすと、手のひらの上に乗せた。
 ささやくように、口を寄せる。

「HAIナビ。無人航空機(UAV)モード」

 その言葉で、携帯コンピューターから、にゅっとプロペラが飛びだした。
 わたしの手のひらの上から、小さなドローンは、音もなく数センチほど浮かびあがる。

「ターゲットは、白いワニ。それと、翔くん」
『了解』

 頼もしいAIの合成音だ。
 すぐにドローンは、ひゅんと池の上空へ飛んでいった。

 わたしは、そのあいだに目を閉じる。
 胸の前で、両手のひらを合わせると、指を組んだ。
 静かに息を整える。指の組む形を変えながら、九字の呪文を唱えた。

(りん)(ぴょう)(とう)(しゃ)(かい)(ちん)(れつ)(ざい)(ぜん)……」

 どこの流派でも、忍びの家系では有名な呪文だ。
 わたしは精神統一のために、九字の呪文を唱える。
 これで、呪文の効果があるあいだは、少々のことでは驚かない冷静さと、身体能力が爆上がりする。

 翔くんに助けられたときだって、怪異に襲われるまえに、慌てず騒がず九字の呪文を唱えていたら、あんな醜態はさらさなかったと思うんだけれど。
 でも、あれがきっかけで、翔くんのことを知ったから、まあいいよね!
 結果オーライよ!

『白いワニ、確認。翔くんも池に接近中』
「りょーかい!」

 ドローンの報告に返事をしてから、わたしは、足音を消して走りだした。