仲間と私で未来を紡ぐ

「…なあ。うちの見間違いじゃなければ花幻山ってもしかしてクソデケェの?」

いかりはそう言う。
というか、皆言葉にしないだけでそう思っていただろう。
感情達は、ここにきて数ヶ月しか経っていない。
そのため、基本的な煙花散花の地理や歴史などを知らない。
__花幻山がどんな山なのか、知っているわけがないのだ。
目の前にそびえ立つ、斜面が急で崖も見える、言葉に言い表せないぐらい大きな山が花幻山とは夢にも思ってなかっただろう。
その事実に追撃するかの如く、崖からは岩が降ってきており、ときにとても大きな岩石も降ってきていた。

「見間違えなんかではない。あれが花幻山だ。」

淡々とそう言う花韮に、全員が足を止める。
花韮は少し歩いたあと、皆が止まっていることに気づいて振り返る。

「?承知できたんじゃないのか?」
「そんなわけないでしょう…」
「おいちゃんはちぃぃ!!なんっでお前止めなかったんだよ!?」
「いや貴方に首振ったわ。無視したの貴方やろがい。」

白い目をして花幻山をみるちゃんはち。
花韮はため息を吐き言葉を放つ。

「まぁ、経験も大切な修行だ。何してでも良いからこの麓を一周するぞ。」
「え?何してもいいって…パワーボールとか出して良いの?」
「パワーボールとは何かしら?」
「えっやみちゃん知らないの!?」
「わ、私も知らない…かな」
「私も!!」
「ちゃんはち?」

師匠の鋭い視線に、ちゃんはちは口笛を吹いて目を泳がす。

「はぁ…良い。パワーボールとは魔力を練って生み出す乗り物だ。見ていろ。」

そう言うと、花韮は自身の胸の前に手を添え魔力を練る。
すると、その魔力は形を創り、やがて一つの大きな魔力の塊となった。

「…それがパワーボールなのかしら?」
「あぁ。乗り心地も良いし何より便利だ。魔力の消費も少ないしな。」
「へぇ〜…」
「ま、そんなことはどうでもいい。何をしても良いと言ったが、流石にパワーボールは反則だ。」

花韮は、創ったパワーボールの上に乗る。

「ルールを定義しよう。まずは先ほど言ったようにパワーボールは使用禁止。そしてコースは花幻山の麓。岩が降ってきたら自力で対処しろ。」
「なんか十年前よりぬるくなってない?」
「気のせいだ。」

花韮は手を組み、皆を見つめる。

「そして少し補足だ。まずはひかり。」
「はっはい!」

呼ばれたひかりは、元気よく返事をする。

「お前は稲妻のように走れる移動バフをつけることができるな?」
「そ、その通りです!すごい…!」
「それは禁止だ。」
「わ、わかりました!!」
「次にむー。」
「…なにかしら。」
「お前は回復特化で戦闘にはあまり参加しないな?」
「…その通りよ。」
「だからお前は特別に、私が見てもうこれ以上走れないだろうと感じた場合、パワーボールの使用を可とする。」
「は!?特別扱いは良くないっすよ!」
「そーだそーだ!」

いかりとちゃんはちは、不満があるようにブーブーと文句を言う。

「なんだ、お前らは麓二周が望みか。そう遠回しに言わなくとも申告してくれたらそうするが。どうする?。」
「「いえそんなことありません。」」

淡々と言われた恐ろしい言葉に二人はすくみ上がる。

「最後にちゃんはちだな。」
「…なに。」
「お前は基本能力以外使用禁止だ。」
「は!?」
「なんだ。剣と"あれ"が使えるだけありがたいと思え。」
「…いやまぁ…いっか。」

口答えをしたら本当に麓二周されかねない。
ちゃんはちは口をつぐんだ。

「それでは並べ。…おい、ちゃんはちは後ろだぞ。」

前に並ぼうとしたちゃんはちを花韮は止める。

「なぁぁんでだよ!!!」
「当たり前だろう。少しとはいえコースを知っているからな。」
「ふざけんな十分の一も知らないわ」
「ん?もしかして__」
「あー!私後ろが良かったの!ありがたいですー!!!」

ちゃんはちは、そう叫びながら一番後ろへと下がる。

「…よし。それでは修行を始めるぞ。」

皆が走る準備をする。

「よーい…」
「始め!!!!」

その声と同時に、ひかりとちゃんはちはその場から消えた。

「は!?」
「ひ、ひかりはわかるとしても…」
「おいお前ら!そのペースだと数日はかかるぞ!きびきび動け!」

二人の速さに呆然としていた四名は、花韮の怒号に目を覚まして走っていった。