仲間と私で未来を紡ぐ

花幻郷と夢幻郷で共同管理しているこの森。
多くのものは、ここを存亡の森と呼んでいる。
文字通り生きるか死ぬかの森。危険な原生生物がうじゃうじゃと湧いてきて、自然にできた落とし穴や無造作に伸びたツルが行手を阻む。
幾ら四季の温度差があまりない花幻郷だって、夏は暑いし冬は寒い。
しかし、ここ存亡の森は、木の影響で、 夏だと言うのに日差しが全く入らなくて薄暗く、少し肌寒い。
まるで異空間に来たかのような感覚に陥いる。
そんなこの森は、花幻湖から出ている二つの大きな川に挟まれたところに位置していて、その面積は花幻山の十分の一もある。
暗さと巨大な面積。それと、迫る原生生物の恐怖から、冒険者はここら辺へ立ち寄ることはまず無い。
この場所にいる人間は、ちゃんはち達のような管理者か__
とんでもなくやばいやつだ。
ちゃんはちは、花幻山の麓から離れないようにして突き進む。
花幻郷最強と言っても怖いものは怖い。
『位置把握』を切らさないように注意しながら、ゆっくり一歩一歩確実に歩いていく。
邪魔なツルは切って道を切り開き、落とし穴がある場所は花幻山の岩肌を使って避ける。
いつからだろうか、地面にはキノコが生えていた。

(ここら辺から森の中間かな。それにしても花韮はどこにいるんだ。一番弟子を放って他の人のところ行くか?普通。まぁ他の子のことが心配なのはわかるけどさ。)

この環境に慣れ始めたのか、そう思いながら歩く。
瞬間、胸がざわつくのを覚える。
『位置把握』には検知されていない、異質な"何か"の魔力だ。
ちゃんはちは『位置把握』に魔力を込める。
半径二キロメートルだった検知範囲が、徐々に広がっていく。
最大の半径五キロまで検知範囲が伸びるのには約二分かかる。
そうだと言うのに、魔力の消費は激しい。ちゃんはちの秘めている魔力の四分の一を消費してしまう。
それでも、得体の知れないものが二キロ先にいないよりかは、五キロ離れていたところにいた方が精神的に楽だ。
探知範囲は、三キロ、四キロと徐々に増えていき、二分後には半径五キロの探知に成功した。
しかし、得体の知れない"何か"は探知できなかった。
五キロ以上離れていると言うのに、胸のざわめきが止まらない。
"何か"の魔力が、まるで挑発するかのように心臓に纏わりつく。
正体不明の"何か"は探知できないが、この微量の魔力を辿れば自ずと辿り着けるだろう。
ちゃんはちは迷わず魔力を辿る。
修行より他の人の命だ。これを野放しにすれば被害は相当なものになるだろう。
と言うか、もう何かしらの被害が出ているかも知れない。
正義感と恐怖、それと少しの好奇心。
こんなにも魔力を放出できる者に会えるのは数十年ぶりだ。

(頼むからヘタに魔力を持っているだけとかやめてくれよ。)

そう思いながら、ちゃんはちは森を駆けていった。