二十代前半の彼は、まるで二つの世界を同時に生きていた。
ひとつは、夢を追う世界。
ライブハウスの熱気、アンプの唸り、観客の歓声。
インディーズから発売した カセット、レコード、そしてCD。
手に取った瞬間の重みは、少年時代に抱いた「ステージに立ちたい」という夢が確かに現実になっている証だった。
もうひとつは、現実の世界。
二十歳で独立し、長距離トラックの運転手となり、フロントガラス越しに見る朝靄と高速道路の単調なリズムを黙々と走った。
そして、二十三歳で父となった彼を待つ家庭。
子どもが生まれたとき、彼は確かに思った。
――この小さな命を守りたい。
だが、人生はいつも理想通りには進まない。
妻の遊び癖、浮気。
そして、自分自身の胸の奥に残る“夢への未練”。
家庭と音楽、そのどちらも大切にしたいのに、どちらも中途半端になっていく。
深夜の帰宅、 冷めた食卓、言葉の少ない会話。
すれ違いは、気づけば日常になっていた。
ある夜、妻の洋服のポケットに入っていた小さな手紙を見つけたとき、彼は静かに悟った。
――この家庭は、もう戻らない。
二十八歳。
彼は離婚を選んだ。
子どもの寝顔を見ながら、胸が締めつけられた。
守りたかったはずのものを守れなかった。
夢を追い続けた自分を責める気持ちと、それでも夢を捨てきれない自分への苛立ち。
「俺は、何をやっているんだ」
トラックの運転席で迎える夜明けは、いつもより冷たかった。
だが、この痛みが、彼を次のステージへと押し出し、さらに激しく揺れ動く。
ひとつは、夢を追う世界。
ライブハウスの熱気、アンプの唸り、観客の歓声。
インディーズから発売した カセット、レコード、そしてCD。
手に取った瞬間の重みは、少年時代に抱いた「ステージに立ちたい」という夢が確かに現実になっている証だった。
もうひとつは、現実の世界。
二十歳で独立し、長距離トラックの運転手となり、フロントガラス越しに見る朝靄と高速道路の単調なリズムを黙々と走った。
そして、二十三歳で父となった彼を待つ家庭。
子どもが生まれたとき、彼は確かに思った。
――この小さな命を守りたい。
だが、人生はいつも理想通りには進まない。
妻の遊び癖、浮気。
そして、自分自身の胸の奥に残る“夢への未練”。
家庭と音楽、そのどちらも大切にしたいのに、どちらも中途半端になっていく。
深夜の帰宅、 冷めた食卓、言葉の少ない会話。
すれ違いは、気づけば日常になっていた。
ある夜、妻の洋服のポケットに入っていた小さな手紙を見つけたとき、彼は静かに悟った。
――この家庭は、もう戻らない。
二十八歳。
彼は離婚を選んだ。
子どもの寝顔を見ながら、胸が締めつけられた。
守りたかったはずのものを守れなかった。
夢を追い続けた自分を責める気持ちと、それでも夢を捨てきれない自分への苛立ち。
「俺は、何をやっているんだ」
トラックの運転席で迎える夜明けは、いつもより冷たかった。
だが、この痛みが、彼を次のステージへと押し出し、さらに激しく揺れ動く。

