『塵を抱き、塵を払う』― 業とともに生きた半世紀 ―

ギターを手にした瞬間、少年の世界は変わった。
鉄路の響きに憧れた幼い頃の夢は、いつしか歪んだギターの音に姿を変え、胸の奥で燃え始めていた。

中学で組んだバンドは、最初は遊びの延長だった。
だが、音を重ねるたびに、少年の中で何かが確かに育っていった。
「もっと上へ行ける」
そんな確信が、日々強くなっていった。

高校へ進学すると、彼らは地元のライブハウスで演奏するようになっていた。
汗とタバコの匂いが混ざる狭いステージ。
観客は多くても数十人。
それでも、アンプから鳴る音は、少年にとって世界のすべてだった。

そして――

十七歳のとき、転機が訪れる。
たまたま原宿のホコ天(歩行者天国)で撮られた写真が音楽雑誌の編集者の目に留まり、
「次号のアマチュアバンド特集に載せたい」という連絡が来たのだ。
雑誌に掲載された自分たちの写真を見たとき、少年は震えた。

夢が、確かに形になった瞬間だった。

その勢いのまま、彼らは カセットテープを自主制作した。
手書きのジャケット、友人の家で深夜までかけて録音した音源。
それでも、手に取ったときの重みは、何よりも誇らしかった。

やがて、ライブの動員が増え、ライブハウスのインディーズレーベルからレコードを出さないかという話が舞い込んだ。
レコードの溝に刻まれた自分たちの音。
針を落とした瞬間に広がる世界。
少年は、夢がまた一歩現実に近づいたことを実感した。

さらにーー

ついに、テレビ出演の話が来た。
地方局が真夜中に放送する番組だったが、スタジオのライトは眩しく、カメラの赤いランプは心臓の鼓動を早めた。
スタッフの声、台本、リハーサルの緊張感。
すべてが、少年の想像していた“夢の世界”そのものだった。
放送後、彼らの名前は一気に広まり、オリジナルレーベルを立ち上げ、CDのリリースをした。

カセット、レコード、CD――
時代の変化とともに、彼らの音は確かに形を変えながら残っていった。

少年――いや、青年となった彼は、まだ見ぬ世界に広がる、次のステージを夢見ていた。
「いつか必ず、もっと大きな場所へ」
その想いだけが、彼を走らせていた。