中学に入った頃、少年の胸の奥にはまだ、父の背中が残っていた。
制服に身を包み、鉄路の上を走る父の姿。
あの頃は、ただその背中を追いかけていればよかった。
だが、中学受験の失敗は、少年の心に深い影を落としていた。
「期待外れね」
あの教師の言葉は、まるで呪いのように耳に残り続けた。
父のような運転士になりたいという夢も、いつしか「自分には無理なのかもしれない」という諦めに変わっていく。
勉強に身が入らない。
授業中にぼんやり窓の外を眺める時間が増えた。
友人たちの笑い声も、どこか遠くに聞こえる。
少年は、居場所を失っていた。
そんなある日、友人が古びたギターを持ってきた。
「弾いてみるか?」
軽い気持ちで弦を弾いた瞬間、胸の奥に眠っていた何かが弾けた。
鉄路の響きとは違う、もっと自由で、もっと荒々しい音。
その音は、少年の心の奥に溜まっていた黒い石を少しだけ溶かした。
「これだ」
少年は確信した。
父の背中とは違う、自分だけの道があるのだと。
放課後、仲間とスタジオに集まり、アンプから鳴る歪んだ音に身を委ねた。
ギターを握っている間だけは、誰にも否定されなかった。
誰も「期待外れ」とは言わなかった。
だが、現実は甘くない。
反抗的な態度、教師への反発、家での苛立ち。
少年は少しずつ、周囲との軋轢を深めていった。
そして―― 高校入学早々、彼は停学処分を受ける。
「お前、何やってるんだ」
父の声は怒りよりも悲しみに満ちていた。
その表情を見たとき、少年は初めて自分の行動の重さを知った。
だが、ここで運命が動く。
新しい担任教師――戦後生まれの、どこか飄々とした男。
彼は、少年の荒れた態度の奥にある“まっすぐさ”を見抜いた。
「お前は腐ってなんかいない。ただ、行き場を失ってるだけだ」
その言葉は、少年の心に初めて“救い”として届いた。
教師は、少年のギターの話を聞き、バンドの話を聞き、そしてこう言った。
「夢を持つのは悪いことじゃない。ただし、夢を守るには強さがいる」
その言葉は、少年の胸に深く刺さった。
父の背中を追う夢は消えた。
だが、代わりに―― ギターを抱え、ステージに立つ自分の姿が、はっきりと見えるようになっていた。
少年は、再び前を向き始めた。
制服に身を包み、鉄路の上を走る父の姿。
あの頃は、ただその背中を追いかけていればよかった。
だが、中学受験の失敗は、少年の心に深い影を落としていた。
「期待外れね」
あの教師の言葉は、まるで呪いのように耳に残り続けた。
父のような運転士になりたいという夢も、いつしか「自分には無理なのかもしれない」という諦めに変わっていく。
勉強に身が入らない。
授業中にぼんやり窓の外を眺める時間が増えた。
友人たちの笑い声も、どこか遠くに聞こえる。
少年は、居場所を失っていた。
そんなある日、友人が古びたギターを持ってきた。
「弾いてみるか?」
軽い気持ちで弦を弾いた瞬間、胸の奥に眠っていた何かが弾けた。
鉄路の響きとは違う、もっと自由で、もっと荒々しい音。
その音は、少年の心の奥に溜まっていた黒い石を少しだけ溶かした。
「これだ」
少年は確信した。
父の背中とは違う、自分だけの道があるのだと。
放課後、仲間とスタジオに集まり、アンプから鳴る歪んだ音に身を委ねた。
ギターを握っている間だけは、誰にも否定されなかった。
誰も「期待外れ」とは言わなかった。
だが、現実は甘くない。
反抗的な態度、教師への反発、家での苛立ち。
少年は少しずつ、周囲との軋轢を深めていった。
そして―― 高校入学早々、彼は停学処分を受ける。
「お前、何やってるんだ」
父の声は怒りよりも悲しみに満ちていた。
その表情を見たとき、少年は初めて自分の行動の重さを知った。
だが、ここで運命が動く。
新しい担任教師――戦後生まれの、どこか飄々とした男。
彼は、少年の荒れた態度の奥にある“まっすぐさ”を見抜いた。
「お前は腐ってなんかいない。ただ、行き場を失ってるだけだ」
その言葉は、少年の心に初めて“救い”として届いた。
教師は、少年のギターの話を聞き、バンドの話を聞き、そしてこう言った。
「夢を持つのは悪いことじゃない。ただし、夢を守るには強さがいる」
その言葉は、少年の胸に深く刺さった。
父の背中を追う夢は消えた。
だが、代わりに―― ギターを抱え、ステージに立つ自分の姿が、はっきりと見えるようになっていた。
少年は、再び前を向き始めた。

