遺品整理の現場に立つたび、彼は“死”と向き合っていた。
孤独死した部屋に残された生活の痕跡。
誰にも看取られずに消えた命。
遺族の涙、沈黙、そして時に怒り。
そのすべてが、彼の胸に静かに積もっていった。
――人は、なぜ生まれ、なぜ死ぬのか。
その問いは、過去生きてきた人生すべてと、亡くなった人の人生を背負う彼の心に、深く沈んでいった。
そんなある日、彼の人生を決定的に変える出会いが訪れる。
四十七歳。
知人の紹介で高野山の阿闍梨と出会った。
阿闍梨は、まるで彼の過去をすべて見透かしているかのように、静かに、しかし深く言葉を投げかけた。
「あなたは、まだ“業”を抱えたまま生きている」
その一言に、彼の胸が震えた。
音楽の夢、家庭の崩壊、破産、危険な組織との縁、仲間のために戦った日々。
そして、遺品整理で見た無数の死。
そのすべてが、“業”という言葉でひとつにつながった。
阿闍梨は続けた。
「逃げるのではなく、向き合いなさい。あなたの歩いてきた道は、すべて意味がある」
その言葉は、彼の人生で出会ったどんな言葉よりも重く、そして優しかった。
その後、彼は比叡山へ導かれる。
そこで待っていたのは―― 比叡山千日回峰行を滿行した大阿闍梨。
千日回峰行。
山を千日間歩き続け、生と死の境界を超える荒行の修行。
その行を満行した大阿闍梨は、まるで人ではなく、山そのもののような存在だった。
大阿闍梨は、彼をじっと見つめ、静かに言った。
「君は、まだ変われる」そして、「君の後ろには、沢山のご先祖様が応援している」と。
その瞬間、彼の胸の奥で何かが音を立てて崩れ、そして新しい何かが生まれた。
彼は修行を始めた。
比叡山の冷たい空気、高野山の静寂。
山に入るたび、彼は自分の過去と向き合い、抱えてきた“業”をひとつずつ見つめ直した。
そして、修行を続ける中で、阿闍梨との仏縁はさらに深まっていく。
ある日、阿闍梨は彼に言った。
「あなたには、人を導く役目がある」
その言葉に導かれ、彼は阿闍梨が主宰する「涓塵会(けんじんかい)」 を立ち上げ当初から参加した。
仏教の教えをもとに、経営者たちが“利”だけでなく“徳”を学ぶための勉強会。
彼はその後、顧問 に就任し、阿闍梨の教えを現実の経営に生かす架け橋となった。
かつて音楽で人の心を揺らし、 労働組合で仲間を守り、 遺品整理で亡くなった人の人生を受け止めた男が、 今度は“仏の教え”を通して人を導く立場になった。
人生は、どこでどうつながるかわからない。
だが、彼の歩いてきた道は、すべてがこの瞬間へと続いていた。
孤独死した部屋に残された生活の痕跡。
誰にも看取られずに消えた命。
遺族の涙、沈黙、そして時に怒り。
そのすべてが、彼の胸に静かに積もっていった。
――人は、なぜ生まれ、なぜ死ぬのか。
その問いは、過去生きてきた人生すべてと、亡くなった人の人生を背負う彼の心に、深く沈んでいった。
そんなある日、彼の人生を決定的に変える出会いが訪れる。
四十七歳。
知人の紹介で高野山の阿闍梨と出会った。
阿闍梨は、まるで彼の過去をすべて見透かしているかのように、静かに、しかし深く言葉を投げかけた。
「あなたは、まだ“業”を抱えたまま生きている」
その一言に、彼の胸が震えた。
音楽の夢、家庭の崩壊、破産、危険な組織との縁、仲間のために戦った日々。
そして、遺品整理で見た無数の死。
そのすべてが、“業”という言葉でひとつにつながった。
阿闍梨は続けた。
「逃げるのではなく、向き合いなさい。あなたの歩いてきた道は、すべて意味がある」
その言葉は、彼の人生で出会ったどんな言葉よりも重く、そして優しかった。
その後、彼は比叡山へ導かれる。
そこで待っていたのは―― 比叡山千日回峰行を滿行した大阿闍梨。
千日回峰行。
山を千日間歩き続け、生と死の境界を超える荒行の修行。
その行を満行した大阿闍梨は、まるで人ではなく、山そのもののような存在だった。
大阿闍梨は、彼をじっと見つめ、静かに言った。
「君は、まだ変われる」そして、「君の後ろには、沢山のご先祖様が応援している」と。
その瞬間、彼の胸の奥で何かが音を立てて崩れ、そして新しい何かが生まれた。
彼は修行を始めた。
比叡山の冷たい空気、高野山の静寂。
山に入るたび、彼は自分の過去と向き合い、抱えてきた“業”をひとつずつ見つめ直した。
そして、修行を続ける中で、阿闍梨との仏縁はさらに深まっていく。
ある日、阿闍梨は彼に言った。
「あなたには、人を導く役目がある」
その言葉に導かれ、彼は阿闍梨が主宰する「涓塵会(けんじんかい)」 を立ち上げ当初から参加した。
仏教の教えをもとに、経営者たちが“利”だけでなく“徳”を学ぶための勉強会。
彼はその後、顧問 に就任し、阿闍梨の教えを現実の経営に生かす架け橋となった。
かつて音楽で人の心を揺らし、 労働組合で仲間を守り、 遺品整理で亡くなった人の人生を受け止めた男が、 今度は“仏の教え”を通して人を導く立場になった。
人生は、どこでどうつながるかわからない。
だが、彼の歩いてきた道は、すべてがこの瞬間へと続いていた。

