梅雨が明け、うんざりするほど暑い夏が始まる。
私――本宮こよみは、窓際の後ろから2番目の席で頬杖をつきながら、校庭で鮮やかな緑の葉をつけた桜の木をぼんやり眺めていた。
5時間目の数Ⅱと6時間目の現代文、そのあとのLHRは、睡魔との戦いでしかない。
「文化祭の出し物決めます!いい案がある人は手を挙げて教えてください!」
教卓で快活な声を飛ばす学級委員の女子生徒を横目に、私は光が差し込んで明るくなっているところに透明の定規をそっとかざした。
天井にこっそり光を反射させながら、一生発されることなどないであろう意見を頭の中でこねくり回す。
――劇とかダンスは嫌だから、無難に焼きそば屋とかでいいな…
教室の片隅でこっそりうつらうつらしていると、「レモネードスタンドとかでいいと思いまーす!」と男子生徒の声が静かな教室に響いた。
「…レモネードスタンドって意見出ましたけど、異論はありますか?」
チョークがついた指を払いながら、学級委員の男子生徒が消極的な態度で2年Ⅲ組の教室を見回す。
沈黙を肯定と捉えたのか、学級委員の女子生徒が黄色いチョークで『レモネードスタンド』の上に二重丸を書く。
間もなくチャイムが鳴り、2年Ⅲ組は硬直が解けたかのように騒がしくなった。



