バレンタインはキスをして

「ミャーがあんなにヒョウに向かって敵意剥き出しにするなんて、ね」

「それそれ。なんだろうな。ヒョウに恨みでもあんのか?」

「颯に似てるからじゃない?」

「は? あんな極悪非道みたいな目してるかよ。見ろよ、誰か食い殺しかねない目してんじゃん」

颯の視線の先にはヒョウが木の下で寝転がってこちらをじっと見ている。

(やっぱり似てる……)

そう言おうと口を開いた瞬間、颯が勝ち誇ったように笑った。

「ふっ、全然似てねーわ」

(え……っ?!)

ある程度想定していた言葉だが、それでも颯の口から聞くと、内心驚く。

(やっぱり、本人はわかんないんだな)

黙ったまま颯を見上げれば、切長の目と目が合う。

「俺はもっと善良な顔してるからな」

「善良って」

クスッと笑うと颯がまた私の手を引いて歩き出す。


今日は土曜日ということもあり、家族連れやカップルも多い。

行き交う人が時折颯の端正な容姿に視線を向けるのがわかるが、本人は全く気にしてないようで、初めてデートした日と同じように私だけをその目を映してくれている。

家族でくる動物園もいいが、こうやって初めてデートをした場所に二人きりで来ると時間が巻き戻ったみたいだ。

「颯」