バレンタインはキスをして

ガチャリと扉の開く音がして振り向けばスーツ姿の颯と目があった。

「美弥ただいま」

「おかえりなさい……え?!」

扉を開けて入ってきた颯は、なぜか両手に大量の紙袋を抱えている。

「美弥にお土産」

颯は私の前に紙袋をドサッと並べると唇を持ち上げた。

紙袋の中にはワンピースとコートがそれぞれ入っていてどれも有名なブランド物だ。
颯は結婚してからも、こうしてよくプレゼントもしてくれる。

「得意先から帰るときに美弥に似合いそうなの見つけたから、とりあえず全部買った」

「高いのに……こんなに沢山」

貧乏性の私の言葉に、颯が切長の目を不満げに細める。

「俺が愛する奥さんにプレゼントしたらそんなにダメなのかよ」

「いや、そんなことないし……勿論嬉しいけど」

「けど?」

「今日プレゼント貰うの颯でしょう?」

「いいの。クッキーのお礼」

一応まだ窓全開でキッチン及びテーブルにはクッキーを作った痕跡は何もないのだが、嗅覚の鋭い颯にはバレてしまったようだ。

「えと、あとで渡すね」

「うん、すっげー楽しみ」

子供たちがいないからだろうか。

颯がニカッと笑うだけで胸が騒がしくなって、なんだか恋人同士に戻った気分になる。