バレンタインはキスをして

「よし、じゃあ今からベビー服買ってから帰ろうぜ」

「ええっ! まだ性別わからないのに?」

「女に決まってんだろ」


俺はそう言い切ると、ポカンとしている美弥を横目にさっとジャケットを脱ぐ。

そしてジャケットを丸めてクッション代わりに美弥のお腹に挟んでからシートベルトを締めてやる。

「ええっと……ありがとう」

「全然。生まれるまで全力でサポートするし」

「うん。色々……我慢もさせちゃうけど」


俺は『我慢』の2文字にハッとする。

美弥の言っている我慢には勿論セックスも該当するのに気づいたからだ。

(おいおい、待て待て)

(浮かれてたけど……また俺は菩薩にならなきゃいけねぇのかよ)

前回の双子の妊娠期間及び産後の三ヶ月、俺は禁欲を耐え切ったが、あれは想像を絶するものだった。

別に他人より性欲があるとは思っていない。

ただ他人よりも好きな女を独占して、愛したい気持ちが強いだけ。


「じゃあ毎日キスして」

美弥を意地悪く、ぐっと覗き込めば小さな唇が頼りなく動く。

「……いいよ」

美弥の華奢な白い手が俺の頬に触れる。

唇に落とされた小さな熱は、甘い幸せの味がした。




颯、お誕生日おめでとう!!

2026.2.14 遊野煌