シルバーリングの微熱

律儀な彼はいつも待ち合わせの五分前に来ることを思い出して、私はわずかに口元を緩めた。

変わらないことがあるのなら、変わらない想いがあってもいい。

受け取ってもらえなくても拒絶されても、忘れられない強い想いなら大丈夫。

いくら時が流れて埃をかぶってくすぶって灰色になっても、もう一度見つめ直して向き合って、優しく磨いてあげればきっと綺麗になる。

またキラキラと輝きだせる。

お気に入りの黒のロングコートを羽織り、姿見で自身を映してからブーツを履くと私は部屋を出て鍵をかけた。

鼓動が雪の降る速度よりも速くなっていく。

「……はぁ……」

緊張を和らげるように息を吐けば白くまあるい吐息は雪と混ざってすぐに消えていく。

さっきよりも雪の粒は少し大きくなっていて、この調子なら明日にはうっすら積もるだろう。

私は握りしめていた手をそっと開く。手のひらの上のシルバーリングに雪が触れて溶けていく。


──私は今から三年ぶりに智広に会う。

キッカケは二週間前に行われた同級生の結婚式の二次会だった。

お祝いごとのため、互いに無視する訳にもいかず辿々しく『久しぶり』という無難な挨拶から入って、なんとなくその場の流れでLINEを交換した。

なんとなくと言いつつも心の底では少しだけ期待していたから、彼から二人で会わないかと連絡が来た時はすぐに返事をした。

話したいことも謝りたいことも、伝えたいことも沢山ある。

何をどこから話せばいいのかなんてわからないし、正直に言えば彼と向き合うのがこわい気持ちも大いにある。

それでも会いたい。もう一度伝えたい。