シルバーリングの微熱

私は寂しさを紛らわせるように口角を少しあげると、缶の中の思い出たちを一つずつ丁寧に心の中から掬うように取り出していく。

思い出のひとつひとつを目で見て触れれば、その時の情景や感情を鮮やかに思い出すことができる。

彼のことが本当に大好きだったから。

少女漫画に出てくるような自転車の二人乗り、公園のベンチで夕陽に照らされて初めてのキス。
夏祭りで二人で浴衣を着てヨーヨー片手に、焼きそばをシェアしながら見上げた花火。
クリスマスにテーマパークでおそろいのカチューシャをつけて、寒空の下で煌びやかなパレードを見ながらはしゃいだ夜。

数え上げたらキリがない、大切な初恋の思い出たちだ。

そして最後の一枚の写真を取り出せば、目当てのものが静かに姿を現した。

「……あった……」

私は箱の底から現れたそれを覗き込むようにして、優しく指先で摘んで取り出した。それは小さな淡い水色の巾着袋。

紐を解いてそっとひっくり返せば、手のひらの上に7号のシルバーリングがころんと乗っかった。

「あ。すごいくすんでる」

記憶の中では、まるで夜空の星屑を落っことしたかのように白銀に輝いていたシルバーリングは、手入れをしなかったせいで見事な灰色だ。