シルバーリングの微熱

高校三年生から六年間付き合った岩瀬智広(いわせともひろ)と別れたのは今から三年前だ。

互いに社会人になり、遠距離になったことが1番の原因だったように思う。

初めての一人暮らしに仕事は覚えることが沢山で、食べて寝て働いての繰り返しで正直言ってその頃の私に、恋愛に割く時間はほとんど残っていなかった。

智広からのLINEに返信する回数も減って、土日は溜まった家事をして疲れを取る為、睡眠を優先するようになった。

たまの外食も同僚といくことが多くなって、地方に住む智広の一人暮らしの部屋へ行くことも都内の私の家に来てもらうこともなくなった。

このままじゃいけない、そう思えば思うほど智広との恋が重たくなった。それでも別れるつもりはなかった。この恋と智広が私の心の支えでもあったから。

けどある日、仕事が上手くいかなくて苦しくてどうしようもなくて深夜、智広に電話をした。

いますぐに会いたいと泣きながら初めて我儘を言った。

聞き上手の智広は私の話をただ静かに優しく聞いてくれたが、明日も仕事があるからどうしても行けないと言った。

その時、私の中の心の一部分があっけなく崩れた感覚がしたのをよく覚えている。

頭では勿論わかってる。

もう大人と呼ばれる部類の人間なのだから、ちゃんと大人らしく日々を過ごさなければ社会から弾き出されてしまう。

会社を休んでまで恋人に会いに行くなんて物凄く馬鹿げたことであり稚拙だと言うこともわかっていた。