こうして、十年の月日が流れ三月がめぐってきました。
 
今年もたかし君の家に着いたよ。でもボク、広い海をわたってフラフラなんだ。
じまんの真っ黒の羽根もグレーになってしまったよ。
窓から中をのぞいても、たかし君は学校を卒業し、お姉さんは嫁ぎ、二人の部屋は空いています。
 
母さんが、ハチの散歩から帰って来ました。ボクがおしゃべりすると、
「お帰り」
と言って、うれしそうに見てくれました。
「今年のツバメもガレージの屋根で、おしゃべりしてるけど、羽根がグレーで、つやもないよ」
と、心配しておばあさんに声をかけています。
 
四月、巣のしゅうりはできたけど、ボクはもう、ダメ......。もう飛べません。