ガラス越しの恋

ホームルームの後、急いで花蓮の教室に向かった。


花蓮は文系でオレは理系、教室は別棟で離れていたから、走った。

部活でもこんなペースで走ったことはなかった。


「いない?」

花蓮は既に教室にいないと言われた。


「うん。美術室に作品を取りに行くって。しばらく絵を描いてから帰る…」

みなまで聞く前に走った。

美術室の前に立って呼吸を整える。

ドアをゆっくり開けると美術室の奥、窓際に花蓮はいた。

キャンバスの前に座って、手を動かしている。

放課後、夕日のさす教室の中で絵を描いている姿が好きだった。


最初に見せてもらったのはオレ達が部活で走ってる絵だ。


「夢中になってたり真剣になってるとこは描いても楽しい」

と言っていた。


何がきっかけなんて忘れたけど、夢中になっている花蓮の姿をオレは好きになったんだ。