ガラス越しの恋

「ゴメンね。私がそそっかしいばっかりに」

しっかりしているようでどこか抜けていた。そこは相変わらずだった。

軽く挨拶を交わしてすれ違った途端、何も無い道で足を捻ってしまった千春を介抱していたらこんな時間になってしまった。

それは違うな。

さっさと高耶に連絡して戻ってきてもらえば良かっただけの話なのに。千春と離れがたかっただけだ。


どうかしている。千春とのことは終わって、花蓮のことが好きなはずなのに。

千春を優先している。


何度か花蓮からの電話もメールがあったのに全部無視してしまった。

きっと怒ってるだろうな。


また電話がかかってきた。花蓮からだ。

だがすぐに切れてしまった。

すぐに駆け直すと玄関の向うから着信音が聞こえてきた。


「花蓮」


玄関を開けると、そこにいたのは花蓮じゃなくて、高耶がいた。手には花蓮のケータイが握られていた。


「へぇ、彼女を寒空に放っておいて、あんたはココで人の姉貴と暖をとってるってどういうことだよ」


「高耶くん、これはね。私が怪我をして、光臣くんを引き止めてしまったの」

「姉さんは黙っててください」


高耶はオレを見て軽蔑した目をむけてくる。オレはそうされるようなことをしたんだから当然だ。