ガラス越しの恋

別れを切り出したのは、自分からだった。

大学に行く千春に置いて行かれるのが嫌で、それを千春にぶつけてしまった。

千春は黙って受け止めてくれたけど、彼女の優しさに甘えている自分が情けなくて身を引いた。

千春の傍にいると、自分の嫌なところばかりが目に付いた。

千春は優しいから、そんな子供染みた言い訳のような別れの言葉も受け入れてくれた。


好きだから離れなくてはならないなんてなあの頃は知らなかった。



「そろそろ帰るな。一人で大丈夫か?」

「うん。高耶ももうすぐ帰ってくると思うから」


折角、姉が帰って来ているのに高耶は家にいなかった。


「ごめんなさい。花蓮ちゃんにはあとで謝るわ」

「大丈夫だ。事情さえ話せば許してくれる」


そう、本当に仕方ないんだ。

誰だって目の前で怪我をされたら、それがましてや幼馴染だったら放ってなんかおけない。