五月の連休明け、
「ねえねえ、今度の土曜日、みんなでニッケ行かない? たまには将棋以外の話もしたいし」
「いいね! あそこ、お店もたくさんあるし、フードコートも充実してるよね」
陽菜の誘いに、さくらが嬉しそうに乗った。
土曜日、加古川駅で待ち合わせた私たち四人は、徒歩でニッケパークタウンへ向かった。駅から歩いて七分ほどの距離だ。
「やっぱり近くて便利だよね」
休日ということもあって、家族連れやカップルで賑わっていた。
「まずはお昼ご飯を食べよう。何にする?」
私がこう提案すると、
「加古川といえば、かつめしでしょ!」
陽菜は即、こう主張した。その言葉に、みんなが賛成した。フードコートへ向かい、四人でかつめしを注文する。
運ばれてきたお皿には、ご飯の上にビーフカツ、そして甘辛いデミグラスソース。加古川のソウルフードだ。
みんなの分のかつめしがテーブルに揃うまでじっと待つ。
湯気の立つ皿を前にしても、誰も手を付けない。
待っている間、私はスマホを取り出した。
「ちょっと写真撮っていい?」
「わたしも撮る」
さくらも隣でスマホを構える。
つやつやしたデミグラスソース。
こんがり揚がったビーフカツ。
キャベツの白が少しだけ混じる、茶色い景色。
「はい、これ絶対うまいやつ」
陽菜はすでにナイフとフォークを手に、戦闘態勢だ。
「まだやで」
理沙が笑う。
みんなの分が揃うと、声を揃えて、
「いただきます!」
真っ先に箸を伸ばしたのは、やっぱり陽菜だった。
「いただきます言うたで?」
そう言いながら、ナイフとフォークでカツを手際よく切り分ける。
たっぷりのソースを絡めて、ぱくり。
「んー! やっぱこれやわ! かつめしって、明石でもコンビニやスーパーで
たまに見かけるけど、本場はちゃうね♪」
陽菜は口いっぱいに頬張ったまま、親指を立てた。
三人が思わず笑う。
「はや」
「待つのは待つけど、食べるのは早いよね」
さくらと私は思わず突っ込む。
「このソース、癖になるわね」
理沙はソースで口元を汚さないように、ナプキンを添えながら上品に味わっている。
食事をしながら、将棋の話になった。
「最近、私、歩の使い方が少しわかってきた気がする」
私が言うと、陽菜が笑った。
「わかる! 最初は地味だと思ってたけど、歩って大事だよね」
「将棋って、駒の個性があって面白いよね。飛車や角みたいな派手なのも、歩みたいな地道なのも、みんな必要なんだって思う」
理沙の言葉に、さくらが頷いた。
「わたしたち四人も、性格バラバラだけど、それがいいのかもね」
「そういえばさぁ」
陽菜がジュースのストローをくるくる回しながら言った。
「加古川駅前に将棋盤つきのベンチあるやん? 駒持って行ったら、ほんまに指せるらしいで」
「ええ、知っていますわ。わたくし、一度見かけました」
理沙は静かに頷く。
「観光用かと思っておりましたけれど、実際に対局している方もいらっしゃいました」
「……そんなにすごいことやったんや」
私は少し照れくさくなる。地元すぎて、特別だと思ったこともなかった。
さくらが思い出したように続けた。
「このニッケのセンタープラザでも、たまに将棋のイベントやってるよ。プロ棋士がゲストで来ることもあるんやって」
「うち、それ行ってみたい!」
加古川では、将棋は特別な趣味というより、街の風景の一部なのかもしれなかった。
食後は、ショッピングセンター内を散策した。雑貨店を見たり、ファッションフロアで洋服を眺めたり。高校生にとって、ウィンドウショッピングも楽しい時間だ。
「将棋の本、見てみようよ!」
陽菜の提案で、みんなで書店に入った。趣味の棚には、将棋の入門書がずらりと並んでいる。
「うわ、こんなにあるんだ」
「この『女子のための将棋入門』って本、わかりやすそう」
理沙が手に取った本を、四人で覗き込んだ。イラストが可愛くて、説明も丁寧だ。
「買おうよ、部室に置いておこう」
一冊の本を四人で購入して、カフェでケーキを食べながらページをめくった。
「へえ、囲いっていう守り方があるんだ」
「矢倉、美濃囲い……かっこいい名前」
将棋の本を読んでいると、窓の外では夕日が傾き始めていた。
「ねえねえ、今度の土曜日、みんなでニッケ行かない? たまには将棋以外の話もしたいし」
「いいね! あそこ、お店もたくさんあるし、フードコートも充実してるよね」
陽菜の誘いに、さくらが嬉しそうに乗った。
土曜日、加古川駅で待ち合わせた私たち四人は、徒歩でニッケパークタウンへ向かった。駅から歩いて七分ほどの距離だ。
「やっぱり近くて便利だよね」
休日ということもあって、家族連れやカップルで賑わっていた。
「まずはお昼ご飯を食べよう。何にする?」
私がこう提案すると、
「加古川といえば、かつめしでしょ!」
陽菜は即、こう主張した。その言葉に、みんなが賛成した。フードコートへ向かい、四人でかつめしを注文する。
運ばれてきたお皿には、ご飯の上にビーフカツ、そして甘辛いデミグラスソース。加古川のソウルフードだ。
みんなの分のかつめしがテーブルに揃うまでじっと待つ。
湯気の立つ皿を前にしても、誰も手を付けない。
待っている間、私はスマホを取り出した。
「ちょっと写真撮っていい?」
「わたしも撮る」
さくらも隣でスマホを構える。
つやつやしたデミグラスソース。
こんがり揚がったビーフカツ。
キャベツの白が少しだけ混じる、茶色い景色。
「はい、これ絶対うまいやつ」
陽菜はすでにナイフとフォークを手に、戦闘態勢だ。
「まだやで」
理沙が笑う。
みんなの分が揃うと、声を揃えて、
「いただきます!」
真っ先に箸を伸ばしたのは、やっぱり陽菜だった。
「いただきます言うたで?」
そう言いながら、ナイフとフォークでカツを手際よく切り分ける。
たっぷりのソースを絡めて、ぱくり。
「んー! やっぱこれやわ! かつめしって、明石でもコンビニやスーパーで
たまに見かけるけど、本場はちゃうね♪」
陽菜は口いっぱいに頬張ったまま、親指を立てた。
三人が思わず笑う。
「はや」
「待つのは待つけど、食べるのは早いよね」
さくらと私は思わず突っ込む。
「このソース、癖になるわね」
理沙はソースで口元を汚さないように、ナプキンを添えながら上品に味わっている。
食事をしながら、将棋の話になった。
「最近、私、歩の使い方が少しわかってきた気がする」
私が言うと、陽菜が笑った。
「わかる! 最初は地味だと思ってたけど、歩って大事だよね」
「将棋って、駒の個性があって面白いよね。飛車や角みたいな派手なのも、歩みたいな地道なのも、みんな必要なんだって思う」
理沙の言葉に、さくらが頷いた。
「わたしたち四人も、性格バラバラだけど、それがいいのかもね」
「そういえばさぁ」
陽菜がジュースのストローをくるくる回しながら言った。
「加古川駅前に将棋盤つきのベンチあるやん? 駒持って行ったら、ほんまに指せるらしいで」
「ええ、知っていますわ。わたくし、一度見かけました」
理沙は静かに頷く。
「観光用かと思っておりましたけれど、実際に対局している方もいらっしゃいました」
「……そんなにすごいことやったんや」
私は少し照れくさくなる。地元すぎて、特別だと思ったこともなかった。
さくらが思い出したように続けた。
「このニッケのセンタープラザでも、たまに将棋のイベントやってるよ。プロ棋士がゲストで来ることもあるんやって」
「うち、それ行ってみたい!」
加古川では、将棋は特別な趣味というより、街の風景の一部なのかもしれなかった。
食後は、ショッピングセンター内を散策した。雑貨店を見たり、ファッションフロアで洋服を眺めたり。高校生にとって、ウィンドウショッピングも楽しい時間だ。
「将棋の本、見てみようよ!」
陽菜の提案で、みんなで書店に入った。趣味の棚には、将棋の入門書がずらりと並んでいる。
「うわ、こんなにあるんだ」
「この『女子のための将棋入門』って本、わかりやすそう」
理沙が手に取った本を、四人で覗き込んだ。イラストが可愛くて、説明も丁寧だ。
「買おうよ、部室に置いておこう」
一冊の本を四人で購入して、カフェでケーキを食べながらページをめくった。
「へえ、囲いっていう守り方があるんだ」
「矢倉、美濃囲い……かっこいい名前」
将棋の本を読んでいると、窓の外では夕日が傾き始めていた。



