氷みたいな君が、笑った日。

第1話 話しかけてくる人

四月の風は少しだけ冷たい。

窓際の一番後ろ。
それが私、朝比奈凛の居場所。

人と深く関わるのは、面倒だ。

「おはよ、朝比奈」

またこの声。

桐谷陽。
クラスの中心にいるような、やたら優しい男子。

「……おはよ」

最低限の返事。
それで十分なはずなのに。

「今日さ、購買の新作パンうまいらしいよ。一緒に行く?」

「行かない」

即答。

それでも彼は笑う。

「そっか。でもまた誘うね」

どうしてそんなに優しいの。

優しい人は、信用できない。

だって——
期待させるから。

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第2話 文化祭実行委員

文化祭の実行委員決め。

くじを引いた瞬間、嫌な予感がした。

「え、俺も実行委員!」

最悪。

隣で陽が笑っている。

放課後の教室。
二人きりで装飾作業。

「朝比奈って、ほんとは優しいよね」

「は?」

「さっき、後輩に説明してた」

見られてた。

「別に普通」

「そういうとこ好き」

心臓が、少し跳ねる。

そんなときだった。

教室の扉が開く。

「陽?」

知らない女子。

いや、違う。
噂で聞いたことがある。

——元カノ。