両思いでしたがタイムトリップして、敵国の王子と王女になりました!?

 次の日。
 朝、目を覚ますと――
 窓辺に立つロロの姿が目に入った。

「ロロ……?」
「おう。起きたのか」

「まだ、いてくれたんだー!」
「は?おい、なんで泣いて、」

 昨日、寝る時。
 もしかしたら、朝起きたらロロはいないかも……って思ってた。
 だって、ずっと私の傍にいてくれる保障なんてないし。
 ロロにはロロで、行きたい所があるのかもしれないしって。そう思ってたから。
 でも、いた。
 ここに、いてくれた――

「なんでもないの、ロロ。おはよう」
「お、おう……」

 目をゴシゴシ擦って、笑顔でロロに挨拶をする。
 ロロはビックリした様子だったけど……。
「なぁ」と、私にこんな事を尋ねた。

「ミアの会いたい奴って、この国にいねーの?」
「え……」

 いきなりの質問に、ビックリした。

「ロロ? いきなり、どうしたの?」
「昨日の夜、この部屋にある本を読んだ。
 そして、この国の事とか、世界の事を知った。
 もちろん、ミアが王女だって事も」
「そ、そうなんだ」

 別に隠してたわけじゃないから、私が王女だってバレる事は何も問題はない。
 ない、のだけど……。

「ねぇ、ロロ。
 これから私が言う事に、ビックリしないでね?」
「ビックリ?」

「うん。さっきの質問。
 私が会いたい人。それはね――
 スター国のレン王子なの」
「……は?」

 目を丸くしたロロ。
 そりゃ、そうか。
 ハート国にとって敵であるスター国の王子に会いたい、って言ってるんだもんね。
 そりゃ驚くよ。

「待て、待てまて。
 俺が本で読んだ限りだと、スター国とハート国って、」
「うん。めっちゃ仲が悪い」
「よな?」

 頭を抱えながら、私と話をするロロ。
 私も転生後は、ずっとあんな感じで悩んでいたから、今のロロの気持ちがすごく分かる。

「ワケわかんないよね?
 何言ってんだって話だよね」
「ワケ分かんねー。
 けど……。
昨日ミアが言ってた意味が、やっと分かった」

 ――会いたい人がいるんだぁ。って言っても、会える見込みは、全然ないんだけどね

「そりゃ、会えねーわ……」
「へへ、だよね」

 頬をかくしぐさをして、困ったように笑ってしまう。
 そんな私を見て、ロロは「しまった」と思ったらしい。
 ごめんと、素直に私に謝った。

「ミアは、そいつに会いたいんだもんな。
 のに”会えない”って言っちまって……悪い」
「ううん、謝らないで。
 ロロの言ってる事は、本当の事だから」

 そう。私がいくら「会いたい」と思っても、連くんは敵国の王子。
 決して交わる事のない、私達。
 その時、部屋のドアをノックする音が響く。
 時計を見ると、いつものレッスンの時間だった。

 コンコン

「ミア王女、レッスンの時間でございます。そろそろ移動を」
「……行きたくないなぁ」

 ぽそりと呟いた言葉は、側近に聞こえなかったみたい。
 むしろ、私が部屋にいないと思ってるのか――ヒソヒソ声で、側近同士のお喋りが始まった。

「全く、王女にも困ったもんだよな」
「もう二十歳だってのに、未だにレッスンとは……」

「しかも、そのレッスンもサボり気味」
「噂に聞いてた”ダメ王女”ってのは、間違いなかったな」

 言いながら、側近たちは部屋の前からいなくなった。
 足音も話し声も聞こえなくなった頃に、今度は私がロロに謝った。

「ごめんね、聞いてて気分が悪かったよね」
「いや、別に俺は……。
 ってか、今の話……」

「レン王子に会いたいのに、それが叶わなくて。何もかも嫌になっちゃった。
 だから、レッスンなんて言われても身が入らなくて」

 私は、ふにゃりと情けなく笑った。

「そんな私の事を、皆は”ダメ王女”って呼んでるんだ」
「ミア……」

 ロロは羽を出して、私の元へ飛んでくる。
 そして何をするかと思えば……

 ゲシッ

 私の頬に、飛び蹴りをした。

「いたぁい!! 小さいのに、なんて力!?」
「辛気臭いオーラ出してるからだっての。
 ちゃっちゃとやる気を出しやがれての」
「いや、だから……。
 会いたい人に会えないなら、もうどうでもいいっていうか……」

 するとロロは、いつの間に持ったか分からない物差しを、私の腕に置く。
 そして、

「これ以上、弱音を言うなら、ぺチンするからな」
「物差しで”ぺチン”は嫌だよ!?」

 ドレスを綺麗にのばしながら、床の上に正座で座る私。
 そしてロロに「私がダメなのは、自分が一番分かってるの」と、弱音を吐いた。

「私の生きがいって、連くんに会う事だけだからさ。
 その生き甲斐を奪われたら……、体に力が入らないの」

 するとロロは、チッと舌打ちをする。
 小さくて可愛いサイズなのに、存在感は増し増しだ。

「会えないなら、会えるようにするまでだろ」
「え?」

「王女だからこそ会えるって可能性は、いくらでもあると思うけど?」
「可能性……?」

 分かっていなさそうな私に、ロロは積みあがった本まで飛ぶ。
 そしてパンパンと、本を叩いた。

「まずは、こんな本でもいいから、国や世界の事をもっと知れ。
 読み書きにしろ、マナーにしろダンスにしろ、もちっとはマシになれ。
 そして――まずは、ミアが成長しろ。
 そして敵国の王子と話せるチャンスを作れるような、そんな力を持った王女になれ」
「つ、つまり!」

 ゴクンと生唾を呑み込む私を見て、ロロはニヤリと笑った。

「簡単だ。この国の政権を握って、スター国と仲良くなるよう仕向ければいいんだよ」
「!!」

「そうすりゃ、行く末は王子と王女の結婚。
 とかなるんじゃね?」
「け、」

 結婚!?

 私と連くんが!?
 け、けけけけ、結婚!?

「そ、そんな事!」

 と言い返しつつ……。
 頭の中で、私と連くんが結婚したイメージを思い浮かべる。

『あなた~、ご飯出来たわよ♡』
『わあ、美味しそう!ありがとう、美亜♡』

 …………最高。

「ロロ、私、勉強をがんばる!
 もっと王女として成長する!!」
「な、なんだよ。急にやる気だな……?」

「たくさんたくさん頑張って、絶対に連くんと結婚するんだからー!!」
「いや、まずは王子と会う事を目標にしろよ」

 だけど、興奮した私の耳に、ロロの声は届かず。
 妙な熱気に包まれた私を見て、ロロはため息をついたのだった。