ミラージュ・プリンセス♡ 〜私が、王女さまって本当ですか?〜

「レオンハルト! ロゼリア様を独り占めとは、いい度胸じゃないか」

 ユーリウスが仁王立ちしていた。
 眼鏡の奥の瞳が、ギラリと光る。

「ゆ、ユーリウス!? い、いや、これは!」

 レオンハルトが慌てて私から離れる。

「足の怪我のリハビリで――」

「聞いた。だから私も来た」

 ユーリウスがツカツカと歩み寄ってくる。

「魔法による治癒は一時的なものだ。根本的な回復には、魔力を流し込みながらの『療養ダンス』が効果的でね」

「療養ダンス!?」

 そんなのあるの!?

「ああ。古代魔術の一つだ。……さあ、こちらへ」

 ユーリウスが手を差し出す。
 レオンハルトが「ちょっと待て」と言いかけていたが、ユーリウスは無視して私の手を取った。

「では、始める」

 ユーリウスのステップは、レオンハルトとは全く違った。
 流れるように滑らかで、まるで氷の上を滑るスケートみたい。

「力を抜いて。私に身を任せればいい」

 低い声が耳元で囁く。
 ユーリウスの手が、私の腰を優しく、でも確実に支えている。

「……っ」

 さっきまでのぎこちなさが嘘みたいに、体が自然と動く。
 彼の魔法が、私の足に心地よい温かさを送り込んでくる。

「魔力の流れを感じるだろう? これが療養の基本だ」

「す、すごい……本当に、楽になった気がする……」

 嘘じゃなく、なんだか体が軽い。
 もちろん、最初から怪我なんてしてないんだけど。

「ふん。当然だ」

 ユーリウスが得意げに鼻を鳴らした。
 そして、くるりと私を回転させる。

「きゃっ!」

「……綺麗だ」

 ぼそりと呟かれた言葉に、ドキッとする。
 顔を上げると、ユーリウスが真剣な目で私を見つめていた。

「今日のあなたは、いつもと違う。まるで……別人のように、輝いている」

「え……」

「……悪い意味ではない」

 ユーリウスの口元が、わずかに緩んだ。

「その輝きを、失わないでほしい」

 その言葉の意味を考える間もなく。